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地方旅館が体験型観光事業に新規進出した新事業進出補助金の活用事例

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地方旅館の体験型観光への転換|新事業進出補助金の活用事例

地方旅館の多くが「宿泊のみ」の収益モデルに依存し、稼働率の低迷や客単価の頭打ちに苦しんでいます。こうした課題を、体験型観光事業への進出で解決した旅館が、新事業進出補助金(旧事業再構築補助金)を活用して注目を集めています。

本記事では、宿泊業から体験型観光事業に新規進出した旅館の具体的な事例を紹介します。施設改修、コンテンツ開発、集客戦略から売上推移まで、詳細な数値とともに解説します。

項目内容
業態転換宿泊特化型旅館 → 体験型観光+宿泊の複合事業
投資総額7,200万円
補助金額3,600万円(補助率1/2)
新事業開始後の売上宿泊売上+体験売上で年商2.1倍に成長

観光庁のデータから見る体験型観光の需要

観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると、訪日外国人の体験型観光への支出は2019年比で1.8倍に増加しています。国内旅行でも「モノ消費からコト消費へ」のトレンドが加速しており、体験型観光の市場規模は2025年で約1.2兆円と推計されています。

事例旅館の概要|創業80年の老舗旅館が直面した危機

長野県の温泉旅館H社(従業員15名、年商1.2億円)は、創業80年の老舗旅館です。10室30名収容の小規模旅館ながら、源泉かけ流しの温泉と地元食材を使った料理に定評がありました。

宿泊一本足打法の限界

指標2020年2022年2024年傾向
年間稼働率72%55%48%下降
平均客単価18,000円17,500円17,000円微減
年商1.4億円1.1億円9,500万円大幅減
リピート率35%28%22%下降
従業員平均年齢48歳51歳53歳高齢化

特に深刻だったのは、平日の稼働率が20%台にまで落ち込んでいたことです。土日祝は80%以上を維持していたものの、平日の空室が経営を圧迫していました。また、OTA(オンライン旅行代理店)への手数料負担(売上の15〜20%)も利益を削る要因でした。

地方旅館の構造的課題

「温泉と料理だけでは選ばれない時代」になりつつあります。OTAの普及で価格比較が容易になり、宿泊だけの付加価値では差別化が難しくなっています。特に若年層の旅行者は「体験」を重視する傾向が強く、「泊まるだけの旅館」は選択肢から外れやすくなっています。

体験型観光への進出を決断した経緯

H社の3代目社長は、東京で旅行会社に勤めた経験を持つUターン人材です。旅行業界での経験から「宿泊は入口に過ぎず、体験が旅の目的になる」ことを実感していました。

決断のきっかけは、旅館の裏山で地元ガイドと登山した宿泊客が「宿より山が良かった」とSNSに投稿し、その投稿が5,000いいねを獲得したことでした。

この「体験への需要」を事業化するために、新事業進出補助金への申請を決意しました。

体験型観光事業の設計|3つの体験プログラム

H社は、地域資源を活用した3つの体験プログラムを開発しました。いずれも「旅館の宿泊客だけでなく、日帰り客にも提供する」ことで、宿泊に依存しない収益構造を目指しました。

プログラム1: 里山アドベンチャー(通年)

項目内容
内容ガイド付きトレッキング、沢登り、森林ヨガ、星空観察
所要時間半日コース(3時間)/ 1日コース(6時間)
料金半日8,000円 / 1日15,000円(1名あたり)
定員1回あたり2〜8名
ターゲット30〜50代のアウトドア志向カップル・ファミリー

プログラム2: 里山食体験(4月〜11月)

項目内容
内容山菜採り+調理体験、蕎麦打ち、味噌づくり、ジビエBBQ
所要時間3〜4時間
料金6,000〜12,000円(1名あたり、食材費込み)
定員1回あたり4〜12名
ターゲット食に関心の高い30〜60代、訪日外国人

プログラム3: 伝統工芸ワークショップ(通年)

項目内容
内容和紙すき体験、藍染体験、竹細工、陶芸
所要時間2〜3時間
料金5,000〜8,000円(1名あたり、材料費込み)
定員1回あたり2〜6名
ターゲット訪日外国人(インバウンド)、教育旅行

プログラム設計のポイント

3つのプログラムすべてに共通するのは、「地域の既存資源を活用している」点です。新たな観光施設を建設するのではなく、旅館周辺の里山、地元の食材、地域の職人という「すでにあるもの」を組み合わせて体験コンテンツに仕立てています。これにより初期投資を抑えつつ、地域固有の体験を提供できています。

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投資内容と補助金の活用

H社は新事業進出補助金で以下の投資を行いました。

経費区分内容金額
建物費体験棟の新設(ワークショップスペース、調理体験スペース)2,800万円
建物費既存館内のリノベーション(ラウンジ→ギアレンタルカウンター)800万円
機械装置費アウトドア用具一式(トレッキング、沢登り、BBQ設備)600万円
機械装置費工芸ワークショップ設備(陶芸窯、藍染設備等)500万円
システム構築費体験予約システム、多言語対応サイト構築800万円
広告宣伝費インバウンド向けプロモーション、SNSマーケティング500万円
研修費ガイド研修、語学研修(英語・中国語)、安全管理研修200万円
投資総額7,200万円
補助金額(補助率1/2)3,600万円

インバウンド対応の重要性

体験予約システムの多言語対応と、ガイドの語学研修に計1,000万円を投資しています。訪日外国人の体験型観光への需要は急増しており、英語対応だけで潜在顧客が3倍になるとの調査もあります。H社は「グローバル対応」を事業計画書の中核に据えたことで、市場の成長性を高く評価されました。

事業開始後の売上推移と成果

H社の体験型観光事業の業績推移を紹介します。

指標事業開始前1年目2年目3年目
宿泊売上9,500万円1.1億円1.3億円1.5億円
体験プログラム売上0円2,800万円4,500万円6,200万円
全社売上9,500万円1.38億円1.75億円2.12億円
宿泊稼働率48%62%72%82%
平均客単価17,000円22,000円25,000円28,000円
外国人宿泊比率5%15%25%35%
口コミ評価(Google)3.84.34.54.7

最大の成果: 平日稼働率の改善

体験型観光事業の最大の効果は、平日の稼働率が20%台から55%にまで改善したことです。体験プログラムは平日のほうがガイドの手配が容易で、少人数でプライベート感のある体験を提供できるため、むしろ平日を好む顧客層(外国人観光客、シニア層)が増えました。結果として、年間を通じた安定した売上を実現しています。

地域連携の構築|旅館単独ではなく地域で稼ぐ

H社の体験型観光事業の成功は、地域との連携なしには実現しませんでした。体験プログラムの運営パートナーとの関係構築が重要なポイントです。

連携先協力内容報酬体系
地元ガイド(3名)トレッキング・沢登りのガイド1回あたり8,000〜15,000円
農家(2軒)農業体験フィールドの提供売上の20%
伝統工芸職人(4名)ワークショップの講師1回あたり5,000〜10,000円
地元タクシー会社駅からの送迎、観光ガイドタクシー通常運賃+ガイド料1,000円/時
観光協会プロモーション協力、イベント共催年間協賛金30万円

事業計画書での地域連携の記載方法

新事業進出補助金の審査では「地域経済への波及効果」も評価項目です。H社は事業計画書に、地域パートナーとの覚書(MOU)を添付し、連携の具体性を示しました。また、体験プログラムによる地域への経済効果(年間約1,500万円のパートナー報酬、地元食材の仕入れ増加等)を数値で示した点が高く評価されました。

地方旅館の体験型観光進出を成功させるポイント

H社の事例から、地方旅館が体験型観光事業に進出する際の成功ポイントを整理します。

ポイント内容H社の具体例
1. 地域資源の再発見旅館周辺にある「当たり前」の資源を体験コンテンツに変換裏山を「里山アドベンチャー」フィールドに
2. 宿泊と体験のセット販売宿泊+体験のパッケージで客単価を向上「1泊2食+体験付き」プランで客単価65%アップ
3. インバウンド対応多言語対応+外国人が好む体験の設計英語ガイド常駐、Tripadvisrや体験予約サイトへの掲載
4. 安全管理体制の構築アウトドア体験のリスク管理ガイド全員に野外活動指導者資格取得、保険加入
5. 口コミ戦略体験の「写真映え」を設計段階から組み込むフォトスポット設置、体験後に写真データをプレゼント

安全管理は最優先事項

体験型観光事業では、安全管理が最も重要な要素です。トレッキングや沢登りでは事故リスクがゼロではなく、万が一の事故が発生すれば事業の存続に関わります。H社は保険加入(賠償責任保険:対人1億円、対物3,000万円)に加え、全ガイドに救急救命講習の受講を義務付けています。事業計画書にも安全管理体制を詳細に記載してください。

事業計画書の構成例|旅館の体験型観光進出

旅館が体験型観光事業で新事業進出補助金を申請する場合の、事業計画書の構成例を紹介します。

  • 第1章: 事業者概要と現状分析 — 旅館の歴史・強み・稼働率推移・課題の数値データ
  • 第2章: 市場環境分析 — 体験型観光の市場規模・成長性(観光庁データ引用)、インバウンド動向、競合分析
  • 第3章: 新事業の概要 — 体験プログラムの内容・料金・ターゲット、宿泊との連携方法
  • 第4章: 地域連携計画 — パートナー一覧、覚書、地域経済への波及効果
  • 第5章: 投資計画 — 設備投資内訳、見積根拠、建物改修の図面
  • 第6章: 収益計画 — 体験別売上(単価×参加者数×実施回数)、宿泊連動効果、3年間の損益計画
  • 第7章: 安全管理・リスク対策 — 安全管理体制、保険、緊急対応マニュアル
  • 第8章: 実施体制とスケジュール — 人員配置、研修計画、オープンまでのガントチャート

収益計画の積み上げ方

体験型観光の収益計画は「プログラム単価×参加者数×実施回数×稼働日数」で積み上げます。H社の場合、里山アドベンチャー(8,000円×4名×月20回=月64万円)+食体験+工芸体験の合計で、月間体験売上を算出しました。季節変動も考慮し、月ごとの売上計画を作成した点も評価されています。

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よくある質問(FAQ)

はい、宿泊業(日本標準産業分類: 大分類M)から体験型観光サービス業(大分類N)への進出は、事業分野の転換として新規性要件を満たしやすいです。ただし、「朝食に地元食材を使う」程度では既存事業の改善に過ぎず、新規性は認められません。独立した体験プログラムとして収益を上げる事業モデルを示す必要があります。

はい、「建物費」として補助対象になります。ただし、建物費の申請には、建設予定地の登記簿謄本や建築確認申請の写しなど、追加の書類が必要です。また、補助事業期間内に建設を完了する必要があるため、工期の見込みに十分注意してください。

従業員としてのガイドの人件費は補助対象外です。ただし、ガイドの研修費(外部講師への謝金、資格取得費用)は補助対象になります。また、外部ガイドへの業務委託費は「外注費」として認められる場合があります。

体験の内容によって異なります。食品を扱う体験では飲食店営業許可や菓子製造業許可が必要です。アウトドア体験では特定の許認可は不要ですが、国有林を使う場合は入林許可が必要です。また、旅行業法に抵触しないよう、体験プログラムの企画・運営と旅行業の線引きを明確にしてください。

はい、可能です。H社も10室の小規模旅館で採択されています。小規模旅館の場合、投資規模は小さくなりますが、「小規模だからこそ提供できるプライベート感のある体験」を差別化要因として打ち出すことが有効です。補助下限額の750万円(投資総額1,500万円以上)を満たせば申請可能です。

最低限、英語対応は必須です。Webサイトの多言語化、英語対応ガイドの確保、体験説明資料の英語版作成が基本です。中国語やフランス語は対応できればプラスですが、まずは英語を完璧にすることを優先してください。OTAや体験予約プラットフォーム(Klook、GetYourGuide等)への掲載も重要です。

雨天時の代替プログラム(屋内体験への振替)を用意し、事業計画書にも明記してください。H社は雨天時に室内での工芸ワークショップや地元食材を使った調理体験に振り替える仕組みを構築しています。また、季節変動に対しては通年で実施可能なプログラム(工芸ワークショップ等)を複数用意し、売上の安定化を図っています。

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