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飲食店がセントラルキッチン+冷凍食品ECに挑戦した新事業進出補助金の活用事例
公開: 2026年3月15日
更新: 2026年3月15日
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飲食店のセントラルキッチン+冷凍食品EC事業|新事業進出補助金の活用事例
飲食店が「店舗での提供」だけでなく、セントラルキッチンを新設して冷凍食品を製造し、ECサイトで全国に販売する新事業モデルが注目を集めています。コロナ禍で加速した「内食」トレンドを背景に、冷凍食品市場は2025年で約8,200億円に拡大しています。
本記事では、人気ラーメン店がセントラルキッチンを新設し、冷凍ラーメンのEC販売事業に進出した具体的な事例を紹介します。新事業進出補助金(旧事業再構築補助金)を活用して設備投資を行い、「店舗の味を全国に届ける」ビジネスモデルを構築した実例です。
| 項目 | 内容 |
| 業態転換 | 店舗飲食業 → 冷凍食品製造販売業+EC事業 |
| 投資総額 | 8,500万円 |
| 補助金額 | 4,250万円(補助率1/2) |
| 新設施設 | セントラルキッチン(HACCP対応) |
冷凍食品EC市場の拡大
冷凍食品のEC市場は年率20%以上で成長しています。特に「有名店の味を自宅で」というニーズが急増しており、ラーメン、餃子、カレーなどの冷凍食品ECが活況です。1食あたり500〜1,500円の価格帯が主流で、外食と比べて手頃な価格ながら「プロの味」を楽しめる点が支持されています。
事例企業の概要|行列のできるラーメン店の課題
福岡市の人気ラーメン店L社(従業員12名、年商1.3億円)は、博多豚骨ラーメンの名店として地元で高い人気を誇り、3店舗を運営しています。週末は各店舗で30分以上の行列ができる人気ぶりでした。
L社が直面していた経営課題
| 課題 | 具体的な状況 | 数値 |
| ①売上の天井 | 3店舗の座席数×回転率が上限。行列客の機会損失が発生 | 推定機会損失: 年間3,000万円 |
| ②人材不足 | ラーメン職人の確保が困難。3店舗目のオープン後は慢性的な人手不足 | 必要人員15名に対し12名(充足率80%) |
| ③原価率の上昇 | 豚骨・小麦粉・ネギ等の原材料費高騰 | 原価率: 32%→38%(2年間で6pt上昇) |
| ④地理的制約 | 福岡県内のみの営業。全国のファンからの通販要望に応えられず | SNSでの通販要望: 月平均50件 |
特に注目すべきは④の「全国のファンからの通販要望」です。L社のInstagramフォロワーは5万人を超え、旅行で福岡を訪れたファンから「お取り寄せしたい」というDMが月50件以上寄せられていました。
「行列の向こう側」に市場がある
L社の社長は「行列は嬉しいが、並べずに帰るお客さんのほうが多い。さらに、福岡に来られないファンは全国にいる。この"食べたくても食べられない人"に届ける方法が冷凍食品ECだ」と決断の理由を語ります。
投資計画|セントラルキッチンの新設とEC基盤構築
L社は新事業進出補助金で以下の大規模投資を行いました。
| 経費区分 | 内容 | 金額 |
| 建物費 | セントラルキッチン新設(HACCP対応、延床面積150㎡) | 3,500万円 |
| 機械装置費 | 急速冷凍機(プロトン凍結機) | 1,200万円 |
| 機械装置費 | 大型スープ釜(500L×2基)、製麺機 | 800万円 |
| 機械装置費 | 真空包装機、シール機、金属検出機 | 600万円 |
| 機械装置費 | 冷凍保管庫(-30℃、20坪) | 500万円 |
| システム構築費 | ECサイト構築、受注管理、在庫管理システム | 600万円 |
| 広告宣伝費 | ECプロモーション、パッケージデザイン、PR | 800万円 |
| 外注費 | HACCP認証取得コンサルティング | 300万円 |
| 研修費 | 冷凍食品製造技術研修、食品衛生管理研修 | 200万円 |
| 投資総額 | 8,500万円 |
| 補助金額(補助率1/2) | 4,250万円 |
セントラルキッチン新設の注意点
セントラルキッチンの新設は投資額が大きいため、事業計画書での経費の妥当性が厳しく審査されます。L社は設備メーカー3社から相見積もりを取得し、各設備の仕様・スペック・選定理由を詳細に記載しました。特にプロトン凍結機(1,200万円)については、一般的な急速冷凍機との品質比較データを添付し、投資の妥当性を示しました。
冷凍ラーメンの商品開発|店舗の味を再現する技術
冷凍食品ECの成功は「解凍しても店舗の味が再現できるか」にかかっています。L社が特にこだわったのは凍結技術の選定です。
プロトン凍結機の採用理由
| 凍結方式 | 凍結時間(1食) | 品質 | 設備コスト |
| 一般冷凍(-20℃) | 4〜6時間 | 細胞が破壊され、解凍時にドリップ(液体流出)が発生 | 100〜300万円 |
| 急速冷凍(エアブラスト) | 30〜60分 | 一般冷凍より品質良好だが、スープの風味がやや低下 | 300〜600万円 |
| プロトン凍結 | 15〜30分 | 電磁波で細胞膜を保護。解凍後も生に近い品質を維持 | 800〜1,500万円 |
L社は「豚骨スープのコラーゲンの食感」と「自家製麺のコシ」を冷凍後も維持できるプロトン凍結を採用しました。試食テストでは、プロトン凍結品を10名のスタッフが食べ比べ、店舗提供品との差異を5段階評価。結果は平均4.2点(5点満点)で、「ほぼ店と同じ」という評価を得ました。
冷凍商品ラインナップ
| 商品名 | セット内容 | 価格(税込) | 原価率 |
| 博多豚骨ラーメン(2食入) | 冷凍スープ、自家製麺、チャーシュー、薬味 | 1,980円 | 28% |
| 濃厚味噌ラーメン(2食入) | 冷凍スープ、太麺、角煮、もやし | 2,180円 | 30% |
| 博多餃子(20個入) | 冷凍餃子、特製タレ | 1,480円 | 25% |
| チャーシュー丼の素(3食入) | 冷凍チャーシュー、特製ダレ | 1,680円 | 30% |
| 全部セット | 上記4商品のセット | 6,800円 | 28% |
価格設定のポイント
冷凍ラーメンの価格帯は1食あたり800〜1,500円が市場の中心です。L社は1食990円(2食入り1,980円)に設定。店舗のラーメン(1杯850円)よりやや高いですが、「送料込みで自宅に届く有名店の味」としては競争力のある価格です。原価率28%は飲食店(38%)より低く、利益率が高い点もメリットです。
セントラルキッチンの運営体制
L社のセントラルキッチンは、店舗向けの仕込みと冷凍食品の製造を兼ねることで、効率的な運営を実現しています。
1日の運営スケジュール
| 時間帯 | 作業内容 | 担当者 |
| 5:00〜8:00 | スープ炊き出し(店舗用+冷凍用共通) | 調理スタッフ2名 |
| 8:00〜10:00 | 店舗への食材配送準備 | 配送スタッフ1名 |
| 9:00〜15:00 | 冷凍食品の製造(スープ充填→凍結→包装→検品) | 製造スタッフ3名 |
| 15:00〜17:00 | EC受注の出荷作業(ピッキング→梱包→発送) | 出荷スタッフ2名 |
| 17:00〜18:00 | 清掃・翌日の仕込み準備 | 全スタッフ |
HACCP対応と品質管理
セントラルキッチンはHACCP認証を取得し、以下の品質管理体制を構築しています。
| 管理項目 | 基準 | 監視方法 |
| スープ加熱温度 | 中心温度85℃以上、1分以上保持 | 温度記録計で自動記録 |
| 急速冷凍温度 | 1時間以内に-18℃以下に到達 | 凍結機の温度ログ自動記録 |
| 保管温度 | -25℃以下で保管 | 冷凍庫の温度24時間監視 |
| 金属異物 | Fe 1.0mm、SUS 2.0mm以上を検出 | 金属検出機で全品検査 |
| 微生物検査 | 一般生菌数10万以下/g、大腸菌群陰性 | 月2回の外部検査機関検査 |
店舗の仕込みとの共有がコスト効率を高める
セントラルキッチンの最大のメリットは、3店舗の仕込み(スープ・チャーシュー・薬味)と冷凍食品の製造を同じ施設で行えることです。これにより、各店舗の厨房スペースの効率化、仕込みの品質均一化、原材料の大量仕入れによるコスト削減を同時に実現しました。セントラルキッチン導入後、3店舗の原価率は38%から32%に改善しました。
事業開始後の業績推移と成果
L社の冷凍食品EC事業の業績推移を紹介します。
| 指標 | 事業開始前 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
| 店舗売上(3店舗計) | 1.3億円 | 1.35億円 | 1.4億円 | 1.45億円 |
| 冷凍食品EC売上 | 0円 | 3,500万円 | 7,800万円 | 1.3億円 |
| 全社売上 | 1.3億円 | 1.7億円 | 2.18億円 | 2.75億円 |
| 店舗原価率 | 38% | 34% | 32% | 32% |
| EC営業利益率 | - | 10% | 20% | 25% |
| 全社営業利益率 | 5% | 10% | 15% | 18% |
| EC定期購入者数 | 0名 | 350名 | 900名 | 1,800名 |
| 出荷都道府県数 | - | 38道府県 | 46道府県 | 47都道府県 |
3年目には冷凍食品EC売上が店舗売上に迫る規模にまで成長。全社の売上は2.1倍、営業利益率は5%から18%に改善しました。
セントラルキッチンの多角活用
当初はラーメンの冷凍ECのみを計画していましたが、セントラルキッチンの稼働に余裕があったため、2年目から以下の事業も展開しました。①法人向け弁当事業(企業向けランチ宅配、月商200万円)、②ふるさと納税返礼品(福岡市に登録、年間600万円)、③卸売(東京の百貨店催事での販売、年間800万円)。セントラルキッチンは「製造インフラ」として、様々な販路展開の基盤になります。
冷凍食品ECのマーケティング戦略
L社のEC売上を牽引したマーケティング施策を紹介します。
| 施策 | 内容 | 効果 |
| Instagramリール動画 | 冷凍ラーメンの調理動画(湯気が立つ瞬間) | 月間リーチ50万人、EC流入の35% |
| YouTube食レポ連携 | フードYouTuberへの商品提供 | 1動画で月100〜300セット売上 |
| 店舗での告知 | 店舗レジ横にEC告知POP、QRコード | 来店客の8%がECで追加購入 |
| 定期購入キャンペーン | 初回30%OFF、2回目以降15%OFF | 初回購入者の40%が定期購入に移行 |
| 季節限定商品 | 夏の冷やしラーメン、冬の辛味噌ラーメン | 限定品の購入率は通常品の2.5倍 |
「冷凍食品EC×動画」の相性の良さ
冷凍食品ECでは「調理シーン」の動画が購入の決め手になります。凍った状態→鍋に投入→湯気が立つ→盛り付け→一口食べる、という一連の流れを30秒のリール動画にまとめた投稿が、L社のEC売上の35%を牽引しました。テキストや写真だけでは伝わらない「シズル感」が動画の強みです。
冷凍食品EC事業の許認可と物流設計
冷凍食品のEC販売には、飲食店の営業許可とは別に複数の許認可が必要です。また、冷凍物流(コールドチェーン)の設計も重要なポイントです。
| 許認可 | 申請先 | 要件 |
| 食品製造業許可(そうざい製造業) | 保健所 | セントラルキッチンの施設基準を満たすこと |
| 食品の冷凍又は冷蔵業許可 | 保健所 | 冷凍保管設備の基準を満たすこと |
| 食品衛生責任者 | 保健所 | セントラルキッチンに1名配置 |
| 食品表示法対応 | 消費者庁 | 原材料、アレルゲン、栄養成分、保存方法の表示 |
| HACCP認証(任意) | 認証機関 | HACCPプランの策定・実施・記録管理 |
冷凍配送のコスト管理
冷凍食品ECの最大のボトルネックは配送コストです。クール便(冷凍)の送料は常温便より200〜500円高く、これが利益を圧迫します。L社は①一定金額以上で送料無料(5,000円以上)、②まとめ買いセットの強化、③ヤマト運輸との法人契約による送料交渉、の3つの施策で配送コスト問題を解決しました。