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飲食店がセントラルキッチン+冷凍食品ECに挑戦した新事業進出補助金の活用事例

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飲食店のセントラルキッチン+冷凍食品EC事業|新事業進出補助金の活用事例

飲食店が「店舗での提供」だけでなく、セントラルキッチンを新設して冷凍食品を製造し、ECサイトで全国に販売する新事業モデルが注目を集めています。コロナ禍で加速した「内食」トレンドを背景に、冷凍食品市場は2025年で約8,200億円に拡大しています。

本記事では、人気ラーメン店がセントラルキッチンを新設し、冷凍ラーメンのEC販売事業に進出した具体的な事例を紹介します。新事業進出補助金(旧事業再構築補助金)を活用して設備投資を行い、「店舗の味を全国に届ける」ビジネスモデルを構築した実例です。

項目内容
業態転換店舗飲食業 → 冷凍食品製造販売業+EC事業
投資総額8,500万円
補助金額4,250万円(補助率1/2)
新設施設セントラルキッチン(HACCP対応)

冷凍食品EC市場の拡大

冷凍食品のEC市場は年率20%以上で成長しています。特に「有名店の味を自宅で」というニーズが急増しており、ラーメン、餃子、カレーなどの冷凍食品ECが活況です。1食あたり500〜1,500円の価格帯が主流で、外食と比べて手頃な価格ながら「プロの味」を楽しめる点が支持されています。

事例企業の概要|行列のできるラーメン店の課題

福岡市の人気ラーメン店L社(従業員12名、年商1.3億円)は、博多豚骨ラーメンの名店として地元で高い人気を誇り、3店舗を運営しています。週末は各店舗で30分以上の行列ができる人気ぶりでした。

L社が直面していた経営課題

課題具体的な状況数値
①売上の天井3店舗の座席数×回転率が上限。行列客の機会損失が発生推定機会損失: 年間3,000万円
②人材不足ラーメン職人の確保が困難。3店舗目のオープン後は慢性的な人手不足必要人員15名に対し12名(充足率80%)
③原価率の上昇豚骨・小麦粉・ネギ等の原材料費高騰原価率: 32%→38%(2年間で6pt上昇)
④地理的制約福岡県内のみの営業。全国のファンからの通販要望に応えられずSNSでの通販要望: 月平均50件

特に注目すべきは④の「全国のファンからの通販要望」です。L社のInstagramフォロワーは5万人を超え、旅行で福岡を訪れたファンから「お取り寄せしたい」というDMが月50件以上寄せられていました。

「行列の向こう側」に市場がある

L社の社長は「行列は嬉しいが、並べずに帰るお客さんのほうが多い。さらに、福岡に来られないファンは全国にいる。この"食べたくても食べられない人"に届ける方法が冷凍食品ECだ」と決断の理由を語ります。

投資計画|セントラルキッチンの新設とEC基盤構築

L社は新事業進出補助金で以下の大規模投資を行いました。

経費区分内容金額
建物費セントラルキッチン新設(HACCP対応、延床面積150㎡)3,500万円
機械装置費急速冷凍機(プロトン凍結機)1,200万円
機械装置費大型スープ釜(500L×2基)、製麺機800万円
機械装置費真空包装機、シール機、金属検出機600万円
機械装置費冷凍保管庫(-30℃、20坪)500万円
システム構築費ECサイト構築、受注管理、在庫管理システム600万円
広告宣伝費ECプロモーション、パッケージデザイン、PR800万円
外注費HACCP認証取得コンサルティング300万円
研修費冷凍食品製造技術研修、食品衛生管理研修200万円
投資総額8,500万円
補助金額(補助率1/2)4,250万円

セントラルキッチン新設の注意点

セントラルキッチンの新設は投資額が大きいため、事業計画書での経費の妥当性が厳しく審査されます。L社は設備メーカー3社から相見積もりを取得し、各設備の仕様・スペック・選定理由を詳細に記載しました。特にプロトン凍結機(1,200万円)については、一般的な急速冷凍機との品質比較データを添付し、投資の妥当性を示しました。

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冷凍ラーメンの商品開発|店舗の味を再現する技術

冷凍食品ECの成功は「解凍しても店舗の味が再現できるか」にかかっています。L社が特にこだわったのは凍結技術の選定です。

プロトン凍結機の採用理由

凍結方式凍結時間(1食)品質設備コスト
一般冷凍(-20℃)4〜6時間細胞が破壊され、解凍時にドリップ(液体流出)が発生100〜300万円
急速冷凍(エアブラスト)30〜60分一般冷凍より品質良好だが、スープの風味がやや低下300〜600万円
プロトン凍結15〜30分電磁波で細胞膜を保護。解凍後も生に近い品質を維持800〜1,500万円

L社は「豚骨スープのコラーゲンの食感」と「自家製麺のコシ」を冷凍後も維持できるプロトン凍結を採用しました。試食テストでは、プロトン凍結品を10名のスタッフが食べ比べ、店舗提供品との差異を5段階評価。結果は平均4.2点(5点満点)で、「ほぼ店と同じ」という評価を得ました。

冷凍商品ラインナップ

商品名セット内容価格(税込)原価率
博多豚骨ラーメン(2食入)冷凍スープ、自家製麺、チャーシュー、薬味1,980円28%
濃厚味噌ラーメン(2食入)冷凍スープ、太麺、角煮、もやし2,180円30%
博多餃子(20個入)冷凍餃子、特製タレ1,480円25%
チャーシュー丼の素(3食入)冷凍チャーシュー、特製ダレ1,680円30%
全部セット上記4商品のセット6,800円28%

価格設定のポイント

冷凍ラーメンの価格帯は1食あたり800〜1,500円が市場の中心です。L社は1食990円(2食入り1,980円)に設定。店舗のラーメン(1杯850円)よりやや高いですが、「送料込みで自宅に届く有名店の味」としては競争力のある価格です。原価率28%は飲食店(38%)より低く、利益率が高い点もメリットです。

セントラルキッチンの運営体制

L社のセントラルキッチンは、店舗向けの仕込みと冷凍食品の製造を兼ねることで、効率的な運営を実現しています。

1日の運営スケジュール

時間帯作業内容担当者
5:00〜8:00スープ炊き出し(店舗用+冷凍用共通)調理スタッフ2名
8:00〜10:00店舗への食材配送準備配送スタッフ1名
9:00〜15:00冷凍食品の製造(スープ充填→凍結→包装→検品)製造スタッフ3名
15:00〜17:00EC受注の出荷作業(ピッキング→梱包→発送)出荷スタッフ2名
17:00〜18:00清掃・翌日の仕込み準備全スタッフ

HACCP対応と品質管理

セントラルキッチンはHACCP認証を取得し、以下の品質管理体制を構築しています。

管理項目基準監視方法
スープ加熱温度中心温度85℃以上、1分以上保持温度記録計で自動記録
急速冷凍温度1時間以内に-18℃以下に到達凍結機の温度ログ自動記録
保管温度-25℃以下で保管冷凍庫の温度24時間監視
金属異物Fe 1.0mm、SUS 2.0mm以上を検出金属検出機で全品検査
微生物検査一般生菌数10万以下/g、大腸菌群陰性月2回の外部検査機関検査

店舗の仕込みとの共有がコスト効率を高める

セントラルキッチンの最大のメリットは、3店舗の仕込み(スープ・チャーシュー・薬味)と冷凍食品の製造を同じ施設で行えることです。これにより、各店舗の厨房スペースの効率化、仕込みの品質均一化、原材料の大量仕入れによるコスト削減を同時に実現しました。セントラルキッチン導入後、3店舗の原価率は38%から32%に改善しました。

事業開始後の業績推移と成果

L社の冷凍食品EC事業の業績推移を紹介します。

指標事業開始前1年目2年目3年目
店舗売上(3店舗計)1.3億円1.35億円1.4億円1.45億円
冷凍食品EC売上0円3,500万円7,800万円1.3億円
全社売上1.3億円1.7億円2.18億円2.75億円
店舗原価率38%34%32%32%
EC営業利益率-10%20%25%
全社営業利益率5%10%15%18%
EC定期購入者数0名350名900名1,800名
出荷都道府県数-38道府県46道府県47都道府県

3年目には冷凍食品EC売上が店舗売上に迫る規模にまで成長。全社の売上は2.1倍、営業利益率は5%から18%に改善しました。

セントラルキッチンの多角活用

当初はラーメンの冷凍ECのみを計画していましたが、セントラルキッチンの稼働に余裕があったため、2年目から以下の事業も展開しました。①法人向け弁当事業(企業向けランチ宅配、月商200万円)、②ふるさと納税返礼品(福岡市に登録、年間600万円)、③卸売(東京の百貨店催事での販売、年間800万円)。セントラルキッチンは「製造インフラ」として、様々な販路展開の基盤になります。

冷凍食品ECのマーケティング戦略

L社のEC売上を牽引したマーケティング施策を紹介します。

施策内容効果
Instagramリール動画冷凍ラーメンの調理動画(湯気が立つ瞬間)月間リーチ50万人、EC流入の35%
YouTube食レポ連携フードYouTuberへの商品提供1動画で月100〜300セット売上
店舗での告知店舗レジ横にEC告知POP、QRコード来店客の8%がECで追加購入
定期購入キャンペーン初回30%OFF、2回目以降15%OFF初回購入者の40%が定期購入に移行
季節限定商品夏の冷やしラーメン、冬の辛味噌ラーメン限定品の購入率は通常品の2.5倍

「冷凍食品EC×動画」の相性の良さ

冷凍食品ECでは「調理シーン」の動画が購入の決め手になります。凍った状態→鍋に投入→湯気が立つ→盛り付け→一口食べる、という一連の流れを30秒のリール動画にまとめた投稿が、L社のEC売上の35%を牽引しました。テキストや写真だけでは伝わらない「シズル感」が動画の強みです。

冷凍食品EC事業の許認可と物流設計

冷凍食品のEC販売には、飲食店の営業許可とは別に複数の許認可が必要です。また、冷凍物流(コールドチェーン)の設計も重要なポイントです。

許認可申請先要件
食品製造業許可(そうざい製造業)保健所セントラルキッチンの施設基準を満たすこと
食品の冷凍又は冷蔵業許可保健所冷凍保管設備の基準を満たすこと
食品衛生責任者保健所セントラルキッチンに1名配置
食品表示法対応消費者庁原材料、アレルゲン、栄養成分、保存方法の表示
HACCP認証(任意)認証機関HACCPプランの策定・実施・記録管理

冷凍配送のコスト管理

冷凍食品ECの最大のボトルネックは配送コストです。クール便(冷凍)の送料は常温便より200〜500円高く、これが利益を圧迫します。L社は①一定金額以上で送料無料(5,000円以上)、②まとめ買いセットの強化、③ヤマト運輸との法人契約による送料交渉、の3つの施策で配送コスト問題を解決しました。

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よくある質問(FAQ)

土地の確保からHACCP認証取得まで、最短で8〜12ヶ月が目安です。建物の設計・建設に4〜6ヶ月、設備の搬入・据付に1〜2ヶ月、試運転・HACCP体制構築に2〜3ヶ月かかります。補助事業期間(通常12〜14ヶ月)内に完了するよう、事前準備を早めに進めてください。

一般的に製造日から6ヶ月〜1年です。L社のラーメンは製造日から6ヶ月に設定しています。賞味期限は保存試験(加速試験)の結果に基づいて設定し、食品分析センター等の外部機関で検査を行ってください。

生産量に応じて選定します。月産1,000食程度であればエアブラスト式(300〜600万円)で十分ですが、品質を重視する場合や月産5,000食以上を目指す場合はプロトン凍結機(800〜1,500万円)がおすすめです。複数メーカーのデモンストレーションに参加し、自社の食品で試験凍結してから決定してください。

冷凍便対応の主要キャリアは、ヤマト運輸(クール宅急便)、佐川急便(飛脚クール便)、日本郵便(チルドゆうパック)です。L社はヤマト運輸と法人契約を結び、月間出荷200個以上の条件で通常料金から30%割引を実現しました。出荷量が多い場合は法人契約での交渉が必須です。

いいえ、飲食店の営業許可とは別に、食品製造業許可(そうざい製造業等)と食品の冷凍業許可が必要です。また、店舗の厨房とは別のHACCP対応の製造施設が求められます。既存店舗の厨房を改修してセントラルキッチンにすることも可能ですが、営業時間との兼ね合いに注意してください。

所在地の自治体のふるさと納税担当窓口に申請します。返礼品は寄附額の30%以下の市場価格であることが条件です。L社は福岡市に登録し、寄附額1万円の返礼品として「冷凍ラーメン4食セット」を出品しています。ふるさと納税は広告費ゼロで全国に販路を持てる強力なチャネルです。

食品表示法に基づき、原材料名(重量順)、アレルゲン(特定原材料7品目+推奨21品目)、内容量、賞味期限、保存方法、製造者情報、栄養成分表示を記載する必要があります。食品表示のミスは法令違反となるため、食品表示コンサルタントや保健所に事前確認を依頼してください。

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