採択事例
建設会社がドローン事業に参入した新事業進出補助金の活用事例
公開: 2026年3月15日
更新: 2026年3月15日
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建設会社のドローン事業参入|新事業進出補助金の活用事例
建設業界ではi-Construction(建設DX)の推進により、ドローンを活用した測量・点検が急速に普及しています。国土交通省は公共工事でのICT活用を義務化する方針を示しており、ドローン測量・点検の市場は2025年で約2,800億円に達すると推計されています。
本記事では、建設会社がドローン測量・点検サービス事業に参入し、新事業進出補助金(旧事業再構築補助金)を活用して事業化に成功した具体的な事例を紹介します。機材投資、パイロット育成、顧客獲得から売上推移まで詳細に解説します。
| 項目 | 内容 |
| 業態転換 | 土木・建築工事(施工業)→ ドローン測量・点検サービス(サービス業) |
| 投資総額 | 5,800万円 |
| 補助金額 | 2,900万円(補助率1/2) |
| 主なサービス | ドローン測量、インフラ点検、3D計測、空撮 |
建設会社がドローン事業に有利な理由
建設会社は「現場を知っている」というドローン事業における最大の強みを持っています。測量の精度要件、施工管理の基準、安全管理のルールを理解しているため、IT系のドローン企業にはない「現場感覚」でサービスを提供できます。
事例企業の概要|地方の中堅建設会社が直面した課題
北関東の建設会社J社(従業員50名、年商8.5億円)は、公共工事を中心に土木・建築工事を手がける中堅ゼネコンです。創業45年、地元での信頼は厚いものの、近年の経営環境は厳しさを増していました。
J社が直面していた3つの課題
| 課題 | 具体的な状況 | 影響 |
| ①深刻な人手不足 | 技能者の平均年齢56歳、若手採用が3年連続ゼロ | 工期遅延リスク、受注制限 |
| ②利益率の低下 | 人件費上昇と資材高騰で営業利益率が3%まで低下 | 経営の安定性が低下 |
| ③公共工事の減少 | 地方の公共工事予算が縮小傾向 | 売上の先行きが不透明 |
特に深刻だったのは人手不足です。現場監督の平均年齢が56歳に達し、5年以内に10名が定年退職を控える状況でした。若手の採用は「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージから難航し、3年連続で新卒採用ゼロという事態に陥っていました。
ドローン事業への参入を決断した背景
J社の社長がドローン事業に着目したのは、公共工事の現場でi-Constructionへの対応が求められるようになったことがきっかけです。
i-Constructionでは、3D測量データの提出が求められる案件が増加しており、J社は外部の測量会社にドローン測量を委託していました。その委託費は1現場あたり50〜100万円で、年間で約800万円のコストが発生していました。
「外注するなら自社でやろう」からの発想転換
当初は「自社工事のコスト削減」が目的でしたが、周囲の建設会社も同様にドローン測量を外注していることに気づきました。「自社で内製化するだけでなく、他社にもサービス提供すれば新事業になる」という発想が、新事業進出補助金の申請につながりました。
投資計画と補助金の活用内訳
J社は新事業進出補助金で以下の投資を行いました。
| 経費区分 | 内容 | 金額 |
| 機械装置費 | 産業用ドローン(測量用3機、点検用2機、予備1機) | 1,800万円 |
| 機械装置費 | 3Dレーザースキャナー、RTK-GNSS基準局 | 1,200万円 |
| 機械装置費 | データ処理用ワークステーション3台、3Dソフトウェア | 600万円 |
| 建物費 | ドローン格納庫・メンテナンス工房の新設 | 800万円 |
| 研修費 | ドローンパイロット養成(国家資格取得)、3D測量研修 | 600万円 |
| 広告宣伝費 | Webサイト、デモンストレーション動画、展示会出展 | 400万円 |
| 外注費 | サービス設計コンサルティング、マニュアル整備 | 400万円 |
| 投資総額 | 5,800万円 |
| 補助金額(補助率1/2) | 2,900万円 |
ドローン事業の資格要件
2022年12月からドローンの国家資格制度(一等/二等無人航空機操縦士)が開始されました。特に目視外飛行や人口集中地区での飛行には一等資格が必要です。J社は社員5名に一等資格を取得させ、研修費として600万円を投資しました。資格取得費用は補助対象になるため、計画書に取得スケジュールを明記してください。
ドローンサービスの設計|4つのサービスライン
J社は建設業界での知見を活かし、4つのドローンサービスラインを設計しました。
サービス1: ドローン測量(3D点群データ作成)
| 項目 | 内容 |
| 概要 | ドローンによる空撮写真から3D点群データ・等高線図・断面図を作成 |
| 精度 | 水平精度±2cm、垂直精度±3cm(RTK-GNSS使用時) |
| 対応面積 | 1,000㎡〜100ha |
| 料金 | 基本15万円+面積1haあたり5万円 |
| 納品物 | 3D点群データ、オルソ画像、数量計算書 |
サービス2: インフラ点検(橋梁・建物外壁)
| 項目 | 内容 |
| 概要 | 橋梁、トンネル、ビル外壁、煙突等のドローン点検 |
| 使用機材 | 赤外線カメラ搭載ドローン、ズームカメラ搭載ドローン |
| メリット | 足場不要で安全・短期間・低コスト(従来工法の1/3〜1/5) |
| 料金 | 1棟15万〜80万円(規模による) |
| 納品物 | 点検報告書、損傷箇所マッピング、補修提案 |
サービス3: 工事進捗管理(定期空撮)
| 項目 | 内容 |
| 概要 | 建設現場の定期空撮で工事進捗を可視化 |
| 頻度 | 週1回〜月1回 |
| 料金 | 月額5万〜15万円 |
| 付加価値 | タイムラプス動画、3D完成予想との重畳表示 |
サービス4: 不動産・観光向け空撮
| 項目 | 内容 |
| 概要 | 不動産物件の空撮、観光プロモーション動画の撮影 |
| 料金 | 1案件10万〜50万円 |
| ターゲット | 不動産会社、自治体、観光協会、ゴルフ場 |
サービス設計のポイント: 建設+αの展開
J社が設計した4サービスのうち、サービス1〜3は建設業界向け、サービス4は非建設領域です。建設業界向けサービスで確実な収益基盤を築きながら、非建設領域にも展開することで市場を拡大する戦略です。事業計画書では、この「段階的な市場拡大」の道筋を示すことが重要です。
パイロット育成|建設技術者からドローンパイロットへ
J社はドローンパイロットを外部から採用するのではなく、既存の建設技術者を再教育する方針を取りました。
| 段階 | 内容 | 期間 | 対象者 |
| 1. 基礎飛行訓練 | ドローンスクールでの基礎操縦訓練(屋内・屋外) | 2週間 | 5名 |
| 2. 国家資格取得 | 二等無人航空機操縦士の取得、うち2名は一等を取得 | 1〜3ヶ月 | 5名 |
| 3. 測量・点検専門訓練 | 3D測量データ処理、赤外線画像解析、点検報告書作成 | 2ヶ月 | 5名 |
| 4. 現場OJT | ベテランパイロット同行のもと実現場で飛行 | 3ヶ月 | 5名 |
建設技術者がパイロットに適している理由
建設現場の経験者は「安全管理」の意識が高く、ドローン飛行のリスク管理に優れています。また、測量の基礎知識があるため、3D測量データの精度管理や数量計算への理解が早いです。J社では、現場監督経験10年以上のベテラン3名が最も優秀なパイロットに成長しました。「現場を知っている人間がドローンを飛ばす」ことの価値は、顧客からも高く評価されています。
事業化後の業績推移と成果
J社のドローン事業の業績推移を紹介します。
| 指標 | 1年目 | 2年目 | 3年目 |
| ドローン測量件数 | 85件 | 150件 | 220件 |
| インフラ点検件数 | 20件 | 45件 | 80件 |
| 空撮・その他件数 | 30件 | 50件 | 65件 |
| ドローン事業売上 | 4,500万円 | 8,800万円 | 1.4億円 |
| ドローン事業営業利益率 | 18% | 28% | 32% |
| 建設事業売上 | 8.2億円 | 7.8億円 | 7.5億円 |
| 全社売上 | 8.65億円 | 8.58億円 | 8.9億円 |
| 全社営業利益率 | 5% | 8% | 12% |
建設事業の売上が微減するなか、ドローン事業が全社の利益率を大幅に改善しました。3年目には全社営業利益率が12%に達し、建設事業単独時代の3%から4倍に向上しました。
副次効果: 若手採用の改善
ドローン事業を開始したことで、J社の採用に大きな変化が起きました。「ドローンパイロット」という新しい職種をアピールしたところ、3年間で8名の若手(20〜30代)を採用できました。うち4名はドローン事業、4名は建設事業に配属。「テクノロジーを使う建設会社」というイメージが、若手の就職先として選ばれる要因になりました。
ドローン事業の法規制と許認可
ドローン事業を始める際に押さえるべき法規制と許認可を整理します。事業計画書にも必ず記載してください。
| 法規制/許認可 | 内容 | 対応方法 |
| 航空法 | 飛行禁止空域、飛行方法の制限 | 飛行許可申請(DIPS)で国土交通省に申請 |
| 無人航空機操縦士資格 | 一等/二等の国家資格 | 登録講習機関で受講→実地試験合格 |
| 機体登録 | 100g以上のドローンは機体登録が義務 | DRS(ドローン登録システム)で登録 |
| 賠償責任保険 | 万が一の事故に備える | 対人1億円以上の保険に加入 |
| 測量業者登録 | 測量サービスを提供する場合に必要 | 測量士または測量士補の配置、国土地理院への登録 |
測量業者登録の要否に注意
公共測量を行う場合は測量業者登録が必要です。民間の測量であれば不要ですが、公共工事に関連する測量は登録が求められます。J社は建設業の許可に加えて測量業者登録も取得し、公共・民間の両方に対応できる体制を構築しました。
建設会社のドローン事業参入|事業計画書のポイント
建設会社がドローン事業で新事業進出補助金を申請する際の事業計画書のポイントを解説します。
| 記載項目 | 審査員が見るポイント | 記載のコツ |
| 市場分析 | ドローン市場の規模と成長性 | 経産省・国交省の統計データ、i-Construction推進状況を引用 |
| 競合優位性 | IT系ドローン会社との差別化 | 建設現場の知見、測量精度管理、安全管理体制を強調 |
| パイロット育成計画 | 資格取得の具体的なスケジュール | 国家資格の取得計画、研修プログラムの詳細を記載 |
| 安全管理体制 | 事故防止の具体策 | 飛行マニュアル、緊急時対応手順、保険加入を明記 |
| 収益計画 | サービス別の売上見込み | 案件単価×件数で積み上げ。自社工事での活用分も計上 |
「自社利用+外販」のハイブリッドモデル
J社の計画書で評価が高かったのは、ドローンを「自社の建設工事にも活用しつつ、外部にもサービス提供する」というハイブリッドモデルを示したことです。自社工事でのドローン活用により年間800万円のコスト削減効果があり、これだけで投資回収の一部を担えます。外販分はすべて追加収益となるため、リスクを分散しながら収益を最大化できるモデルです。