申請実務
新事業進出補助金を自力で申請する方法|コンサル不要の完全ガイド
公開: 2026年3月15日
更新: 2026年3月15日
読了目安: 3分
新事業進出補助金は自力で申請できるのか?
結論から言えば、新事業進出補助金は自力で申請できます。コンサルタントへの依頼は必須ではなく、経営者自身が事業計画書を作成して申請することは制度上まったく問題ありません。実際、自力申請で採択を勝ち取っている企業は少なくありません。
ただし、補助上限9,000万円(補助率: 中小1/2、中堅1/3)という大型補助金であるため、計画書の品質は高いレベルが求められます。自力申請を成功させるには、十分な準備期間と正しい知識が不可欠です。
| 項目 | 自力申請 | コンサル依頼 |
| 費用 | 実質ゼロ(認定支援機関の費用のみ) | 着手金10〜50万円+成功報酬10〜20% |
| 時間 | 経営者自身で50〜100時間程度 | 経営者の関与は20〜30時間程度 |
| 計画書の品質 | 経営者の文章力・分析力に依存 | プロの構成力で安定した品質 |
| 口頭審査 | 自分で書いた内容なので回答しやすい | 丸投げだと回答に窮するリスク |
| 採択率 | 準備次第で差はない | 経験値による加点要素あり |
自力申請の最大のメリット
自力申請の最大のメリットは「コスト削減」と「口頭審査での強さ」です。補助金額が5,000万円の場合、成功報酬15%で750万円のコンサル費用がかかります。また、自分で書いた計画書の内容は完璧に理解しているため、口頭審査で的確に回答できます。
自力申請に向いている企業・向いていない企業
自力申請が適しているかどうかは、企業の状況によって異なります。以下のチェックリストで自己診断してください。
自力申請に向いている企業の特徴
| チェック項目 | 該当する場合のメリット |
| 経営者自身が事業計画の策定経験がある | 計画書作成のスキルがある |
| 顧問税理士が認定支援機関に登録済み | 確認書の取得がスムーズ |
| 新事業の構想が具体的に固まっている | 計画書の骨子作成が容易 |
| 市場調査や競合分析を自社で行った実績がある | データ収集・分析が可能 |
| 文書作成に苦手意識がない | 15〜20ページの計画書を書ける |
| 2〜3ヶ月の準備期間を確保できる | 十分な品質の計画書を作成可能 |
コンサル依頼を検討すべきケース
- 事業計画書を書いた経験が一度もない
- 新事業の構想がまだ漠然としている
- 経営者が多忙で計画書作成に時間を割けない
- 財務データ(付加価値額等)の計算に不安がある
- 締切まで1ヶ月を切っている
「丸投げ」だけは避ける
コンサルタントに依頼する場合でも、計画書の内容を経営者自身が完全に理解していることが必須です。丸投げで作成された計画書は、口頭審査で経営者が質問に答えられず不採択になるケースが多発しています。コンサルはあくまで「支援者」であり、計画の主体は経営者です。
自力申請の完全ロードマップ(10ステップ)
自力申請の全体工程を10ステップで解説します。各ステップの所要時間と合わせて確認してください。
| Step | 作業内容 | 所要時間 | 期限目安 |
| 1 | 公募要領の熟読 | 3〜5時間 | 公募開始直後 |
| 2 | GビズIDプライムの確認・取得 | 1時間+待ち2〜3週間 | 公募開始前 |
| 3 | 認定支援機関への連絡 | 2〜3時間 | 公募開始1週間以内 |
| 4 | 既存事業の分析(SWOT等) | 5〜8時間 | 締切2ヶ月前 |
| 5 | 新事業の市場調査 | 10〜15時間 | 締切2ヶ月前 |
| 6 | 見積書の取得(相見積もり含む) | 5〜10時間+待ち1〜2週間 | 締切6週間前 |
| 7 | 事業計画書の執筆 | 20〜30時間 | 締切4週間前 |
| 8 | 収益計画・付加価値額の計算 | 5〜8時間 | 締切3週間前 |
| 9 | レビュー・修正・確認書取得 | 5〜10時間 | 締切2週間前 |
| 10 | jGrantsでの電子申請 | 2〜3時間 | 締切1週間前 |
合計所要時間の目安
自力申請に必要な時間は合計50〜100時間程度です。2ヶ月間で毎日1〜2時間ずつ取り組めば十分に対応可能です。ただし、見積取得やGビズID取得には「待ち時間」が発生するため、早めの着手が重要です。
自力で行う市場調査の具体的な方法
コンサルタントに頼らずとも、無料または低コストで質の高い市場調査を行うことは可能です。以下のデータソースを活用してください。
無料で使えるデータソース一覧
| データソース | 入手先 | 活用方法 |
| 経済産業省 工業統計 | e-Stat(政府統計ポータル) | 業種別の出荷額・事業所数の推移 |
| 総務省 経済センサス | e-Stat | 地域別・業種別の企業数・従業員数 |
| 中小企業白書 | 中小企業庁 Webサイト | 中小企業の動向、業種別の課題分析 |
| 業界団体の統計資料 | 各業界団体のWebサイト | 市場規模、業界動向の最新データ |
| RESAS(地域経済分析システム) | resas.go.jp | 地域の産業構造、企業動向の可視化 |
| J-GLOBAL(科学技術情報) | jglobal.jst.go.jp | 技術動向、特許情報の調査 |
| 特許情報プラットフォーム | j-platpat.inpit.go.jp | 競合の特許出願状況の確認 |
自力でできる競合分析の方法
競合分析はコンサルタントに頼らなくても実施できます。以下の方法で主要競合3〜5社のデータを収集してください。
- 競合企業のWebサイト分析(製品ラインナップ、価格帯、強み)
- 帝国データバンクまたは東京商工リサーチの企業情報(有料だが1件数百円〜)
- 業界誌・専門紙のバックナンバー検索(図書館で無料閲覧可能)
- 展示会・セミナーでの情報収集(競合のブースを視察)
- 求人情報からの推測(競合の採用状況=事業拡大の兆候)
競合分析の記載テクニック
計画書には「競合比較表」を作成して掲載してください。自社の強みが明確になる比較軸(価格、品質、納期、サポート体制等)を選び、表形式で整理すると審査員にも分かりやすくなります。
事業計画書を自分で書く際の実践テクニック
事業計画書を自分で書くのが初めてという方に向けて、具体的な執筆テクニックを紹介します。
まずはアウトラインから始める
いきなり文章を書き始めるのではなく、まずアウトライン(目次構成)を作成してください。
| セクション | 記載する内容のキーワード | ページ数 |
| 1. 企業概要 | 沿革、売上推移、主要事業、保有技術 | 1〜2P |
| 2. 既存事業の分析 | SWOT分析、課題、新事業進出の動機 | 2〜3P |
| 3. 新事業の概要 | 何を、誰に、どうやって提供するか | 2P |
| 4. 市場分析 | 市場規模、成長率、ターゲット顧客、競合 | 2〜3P |
| 5. 具体的取組 | 設備導入、開発プロセス、販路開拓 | 3〜4P |
| 6. 実施体制 | 組織図、担当者、スケジュール | 1〜2P |
| 7. 経費・資金計画 | 経費内訳、資金調達方法 | 1〜2P |
| 8. 収益・付加価値額 | 5年間の売上・利益・付加価値額推移 | 1〜2P |
| 9. 賃上げ計画 | 給与支給総額、最低賃金の引上げ計画 | 1P |
| 10. 将来展望 | 中長期ビジョン、地域貢献、波及効果 | 1P |
このアウトラインに沿って、各セクションの「キーメッセージ」を箇条書きで整理してから、文章化する流れが効率的です。
文章作成のコツ5選
| コツ | NG例 | OK例 |
| 具体的な数字を入れる | 「大きな市場がある」 | 「○○市場は2025年に3,200億円に達した(矢野経済研究所調べ)」 |
| 主語と述語を明確に | 「設備を導入し品質向上」 | 「当社は○○設備を導入し、検査精度を95%から99%に向上させる」 |
| 一文を短く | 「○○を導入し、△△を実施して、□□を達成するために、◇◇と連携して取り組む」 | 「○○を導入する。これにより△△を実施し、□□の達成を目指す」 |
| 図表を活用 | 文章だけで3ページ | グラフ・表・写真を含めて3ページ |
| 審査項目に対応させる | 「売上を伸ばす」 | 「【収益性】売上目標○○万円の根拠は以下の通りである」 |
完璧を求めすぎない
最初から完璧な文章を書こうとしないでください。まずは内容を書き出し、その後に推敲を重ねる方が効率的です。「60点のドラフトを3回改善して90点にする」のが現実的なアプローチです。
無料で受けられる支援制度を活用する
自力申請でも、無料の支援制度を活用すればプロのアドバイスを受けることができます。
| 支援機関 | 支援内容 | 費用 | 申込方法 |
| よろず支援拠点 | 経営相談、計画書レビュー | 無料 | 各都道府県の拠点に電話・Web予約 |
| 商工会議所・商工会 | 経営指導員による相談 | 無料(会員の場合) | 最寄りの商工会議所に連絡 |
| 都道府県の中小企業支援センター | 専門家派遣、計画書アドバイス | 無料〜一部有料 | 各都道府県の窓口に問い合わせ |
| 金融機関の経営相談窓口 | 融資とセットでの事業計画策定支援 | 無料 | 取引銀行の担当者に相談 |
| 事務局の公募説明会 | 制度説明、質疑応答 | 無料 | 事務局の公式サイトで日程確認 |
よろず支援拠点が特におすすめ
よろず支援拠点は中小企業庁が設置した無料の経営相談所で、全都道府県に設置されています。中小企業診断士等の専門家が補助金の申請支援を行っており、事業計画書のレビューも無料で受けられます。自力申請を考えている方は、まずよろず支援拠点に相談することをおすすめします。
財務データの計算を自分で行う方法
付加価値額の計算や収益計画の策定は、コンサルタントに頼まなくても自分で行えます。
付加価値額の自己計算チェックリスト
- 直近2期分の決算書(損益計算書・製造原価報告書)を手元に準備
- 営業利益を確認(経常利益ではないので注意)
- 人件費を集計(売上原価+販管費の両方から。役員報酬も含む)
- 減価償却費を集計(売上原価+販管費の両方から)
- 3要素を合計 → 付加価値額
- 計画年度の付加価値額を算出(売上計画から逆算)
- 年率平均成長率をExcelで計算(CAGR計算式を使用)
計算結果は税理士に確認
自分で計算した付加価値額は、必ず顧問税理士にダブルチェックしてもらってください。人件費の範囲(どの勘定科目を含めるか)や減価償却費の計上方法は企業の経理処理によって異なるため、専門家の確認が不可欠です。
売上計画の立て方(積み上げ方式)
コンサルタントに頼らず売上計画を立てる場合は、「積み上げ方式」が最も確実です。
| 要素 | 算出方法 | データの根拠 |
| ターゲット顧客数 | 地域×業種×規模で絞り込み | e-Stat、RESAS、業界名簿 |
| アプローチ可能数 | ターゲット×営業リーチ率 | 自社の営業能力から算出 |
| 受注率 | テスト販売実績またはヒアリング結果 | 実績データ or 類似サービスの実績 |
| 顧客単価 | 製品単価×購入頻度 | 見積書、競合価格調査 |
| 年間売上 | 顧客数×受注率×顧客単価 | 上記データの掛け算 |
例: ターゲット企業500社 × 営業接触率30%(150社) × 受注率20%(30社) × 平均単価200万円 = 年間売上6,000万円
提出前の最終チェックリスト(20項目)
自力申請では第三者チェックが手薄になりがちです。以下のチェックリストを使って最終確認してください。
| No. | チェック項目 | 確認 |
| 1 | 公募要領の申請要件をすべて満たしているか | |
| 2 | GビズIDプライムでjGrantsにログインできるか | |
| 3 | 事業計画書のページ数は15〜20ページか | |
| 4 | 新事業の「新規性」が明確に記載されているか | |
| 5 | 市場分析に客観的データ(統計・レポート)を引用しているか | |
| 6 | 競合分析と自社の優位性が記載されているか | |
| 7 | 売上計画に積み上げの根拠があるか | |
| 8 | 付加価値額が年率4%以上成長する計画か | |
| 9 | 賃上げ要件(給与支給総額の増加率等)を満たしているか | |
| 10 | 経費区分ごとの金額と見積書の金額が一致しているか | |
| 11 | 50万円以上の経費に相見積もりを取得しているか | |
| 12 | 実施体制(担当者名・経歴・役割)が記載されているか | |
| 13 | スケジュールがガントチャート等で可視化されているか | |
| 14 | 認定支援機関の確認書を取得済みか | |
| 15 | 決算書(直近2期分)をPDF化済みか | |
| 16 | 図表・写真が適切に使用されているか | |
| 17 | 誤字脱字・計算ミスがないか | |
| 18 | PDFのファイルサイズがアップロード上限以内か | |
| 19 | jGrantsの入力内容と計画書の記載に矛盾がないか | |
| 20 | 締切の1週間前までに申請を完了できるスケジュールか | |