制度・仕組み
新事業進出補助金の対象経費9区分と対象外経費の注意点
公開: 2026年3月15日
更新: 2026年3月15日
読了目安: 3分
新事業進出補助金の対象経費9区分の全体像
新事業進出補助金で補助を受けられる経費は、公募要領で定められた9つの区分に限定されています。新事業への進出に「直接的に必要」な経費のみが対象であり、汎用的な経費や間接費は対象外です。
経費区分を正しく理解することは、事業計画書の策定と適正な経費管理の両面で不可欠です。ここでは各区分の詳細と、申請者がよく間違えるポイントを解説します。
| No. | 経費区分 | 主な内容 |
| 1 | 建物費 | 施設の建設・改修費用 |
| 2 | 機械装置・システム構築費 | 設備・IT投資 |
| 3 | 技術導入費 | 特許・ライセンス取得費 |
| 4 | 専門家経費 | コンサルタント等の報酬 |
| 5 | 運搬費 | 機材の搬入・配送費 |
| 6 | クラウドサービス利用費 | SaaS・IaaS利用料 |
| 7 | 外注費 | 加工・設計の外注費 |
| 8 | 知的財産権等関連経費 | 特許出願等の経費 |
| 9 | 広告宣伝・販売促進費 | 新製品のPR費用 |
ポイント
対象経費は「補助事業期間内」に発注・納品・支払いが完了したものに限られます。交付決定前の発注や、事業期間終了後の支払いは対象外となるため、スケジュール管理が極めて重要です。
【区分1】建物費:施設の建設・改修にかかる費用
建物費は、新事業の実施に不可欠な施設の建設や既存施設の改修にかかる費用です。他の補助金では建物費が対象外となるケースが多いですが、新事業進出補助金では主要な経費区分の一つです。
建物費として認められるもの
- 新事業用の工場・店舗・倉庫の建設費
- 既存施設の改修工事費(新事業に必要な改修に限る)
- 設備の設置に伴う付帯工事費(電気工事・配管工事等)
- 建物の撤去費(新施設建設のために必要な場合)
建物費として認められないもの
- 土地の取得費・賃借料(土地は対象外)
- 不動産取得に関する仲介手数料
- 既存事業のための改修(新事業と無関係な改修)
- 豪華すぎる内装工事(事業に不相応な装飾等)
注意
建物費は総事業費に占める割合の上限が設定される場合があります(公募回により異なる)。建物費中心の計画を立てる場合は、事前に上限比率を確認してください。
【区分2】機械装置・システム構築費:設備・IT投資の中心
機械装置・システム構築費は、新事業進出補助金で最も利用頻度が高い経費区分です。製造設備の導入からITシステムの開発まで、幅広い投資が対象になります。
対象となる具体的な経費
| 種類 | 具体例 | 備考 |
| 製造設備 | 工作機械、食品加工機械、印刷機 | 新品に限る(中古は条件付き) |
| ITシステム | 基幹システム開発、ECサイト構築 | カスタム開発・パッケージ導入いずれも可 |
| 検査・測定機器 | 品質検査装置、センサー類 | 新事業に直接必要なものに限る |
| ソフトウェア | 業務用ソフト、CAD/CAM、AI分析ツール | ライセンス費を含む |
| 車両 | 事業用特殊車両(キッチンカー等) | 汎用車両は対象外 |
中古品の取扱い
原則として新品が対象ですが、一定の条件(3社以上からの相見積もり取得、中古品である合理的な理由の説明等)を満たせば中古品も対象となるケースがあります。公募要領で最新の条件を確認してください。
【区分3〜5】技術導入費・専門家経費・運搬費
区分3〜5は個別の支出額は小さいことが多いですが、事業計画に欠かせない経費です。
技術導入費(区分3)
技術導入費は、新事業に必要な技術やノウハウを外部から導入するための費用です。
- 特許権・実用新案権・意匠権のライセンス取得費
- 技術提携に基づくロイヤリティ(補助事業期間分に限る)
- ノウハウの導入に伴う技術指導料
ただし、知的財産権そのものの「購入」は知的財産権等関連経費(区分8)に分類されるため、混同しないよう注意してください。
専門家経費(区分4)
専門家経費は、新事業の実施にあたって外部の専門家に依頼する際の報酬です。
- コンサルタント報酬(事業計画策定支援、マーケティング支援等)
- 弁理士・弁護士の報酬(知財戦略策定、契約書作成等)
- 技術者・デザイナーの技術指導料
上限に注意
専門家経費には1日あたりの単価上限が設定されています。大学教授等は1日5万円、それ以外の専門家は1日2万円程度が目安です(公募回により変動)。
運搬費(区分5)
運搬費は、機械設備等の搬入や原材料の運搬にかかる費用です。新規に導入する設備の運搬費が該当しますが、日常的な配送費は対象外です。
【区分6〜7】クラウドサービス利用費・外注費
DX関連の投資やシステム開発のアウトソーシングで頻繁に利用される区分です。
クラウドサービス利用費(区分6)
クラウドサービス利用費は、新事業の運営に必要なクラウドサービスの利用料です。
| 対象になるもの | 対象にならないもの |
| 新事業専用のSaaS月額利用料 | 既存事業でも使用している汎用サービス |
| IaaS/PaaS利用料(AWS、Azure等) | プライベート利用のストレージ |
| AI分析ツールのクラウド利用料 | 一般的なメールサービス |
| ECプラットフォームの月額費用 | 通信回線費 |
クラウドサービス利用費は「補助事業期間分」に限られます。年間契約の場合、事業期間に該当する月数分のみ補助対象です。
外注費(区分7)
外注費は、新事業の製品開発や加工を外部に委託する際の費用です。
- 製品の加工・組立の外注費
- 設計・試作の委託費
- 検査・分析の外注費
注意
外注先が関連会社(役員の兼任、資本関係がある企業)の場合、利益相反の観点から補助対象外となるケースがあります。外注先の選定には相見積もりを取得し、取引の適正性を示す必要があります。
【区分8〜9】知的財産権等関連経費・広告宣伝費
新事業の知的財産保護やプロモーションに関する経費です。
知的財産権等関連経費(区分8)
新事業に伴う知的財産権の取得・保全にかかる費用です。
- 特許出願に係る弁理士報酬・特許庁手数料
- 商標登録の出願費用
- 実用新案・意匠の出願費用
ただし、海外出願費用は対象外となるケースが多いため、事前に確認してください。
広告宣伝・販売促進費(区分9)
新事業の製品・サービスを市場に投入するための広告宣伝費です。
| 対象になるもの | 対象にならないもの |
| 新製品のパンフレット・カタログ制作費 | 既存事業の広告費 |
| Webサイト構築費(新事業専用) | SNS広告の運用代行費(条件付き) |
| 展示会出展費(ブース設営・装飾費) | 展示会への渡航費・宿泊費 |
| 動画制作費(商品PR動画等) | 会社全体のブランディング費用 |
| 新聞・雑誌への広告掲載費 | テレビCM(高額すぎる場合は不適切) |
ポイント
広告宣伝費は補助対象経費全体に占める上限比率が設定されることがあります。「広告費だけで補助金を使う」ことはできないため、設備投資やシステム構築と組み合わせた計画にしましょう。
対象外経費の一覧と注意すべき落とし穴
以下の経費は、新事業進出補助金の対象外です。これらを事業計画に含めてしまうと、実績報告の段階で否認され、想定していた補助金額が減額される恐れがあります。
| 対象外経費 | 理由 |
| 人件費(自社従業員の給与) | 補助事業の実施体制の一部であり、直接経費に該当しない |
| 土地の取得費・賃借料 | 資産性が高く補助金の趣旨にそぐわない |
| 消費税 | 仕入税額控除で回収できるため |
| 汎用品(PC・タブレット・プリンタ等) | 新事業以外にも使用可能な汎用品 |
| 通信費・光熱費 | 事業全般の間接費に該当 |
| 交通費・宿泊費 | 出張費は原則対象外 |
| 保険料 | 間接費に該当 |
| 振込手数料 | 金融費用に該当 |
よくある落とし穴
汎用的なPCやタブレットは原則対象外ですが、「AIシステムの専用端末」「工場のライン制御専用PC」など、新事業に専用で使用し他に転用しないことが証明できれば対象となるケースがあります。判断に迷う場合は事務局に事前相談してください。
経費管理と証拠書類の保管ルール
補助事業で支出した経費は、すべて証拠書類で裏付ける必要があります。証拠書類が不備の場合、その経費は補助対象外として否認されます。
| 必要書類 | 内容 | 注意事項 |
| 見積書 | 発注前に取得(50万円以上は2社以上) | 日付入りで保管 |
| 発注書(注文書) | 発注内容・金額を明記 | 交付決定日以降の日付が必要 |
| 契約書 | 大型案件は契約書を締結 | 双方の署名・捺印が必要 |
| 納品書 | 物品・役務の納品確認 | 検収日を記録 |
| 請求書 | 請求金額と経費内訳 | 発注書との金額整合性 |
| 振込明細 | 銀行振込の記録 | 現金払いは原則不可 |
管理のコツ
経費ごとにファイル(クリアフォルダ等)を分けて、「見積書→発注書→納品書→請求書→振込明細」のセットで管理すると、実績報告や確定検査がスムーズに進みます。電子データのバックアップも忘れずに取っておきましょう。