制度・仕組み
【2026年版】新事業進出補助金とは?制度概要・申請要件を完全解説
公開: 2026年3月15日
更新: 2026年3月15日
読了目安: 3分
新事業進出補助金とは?制度の全体像をわかりやすく解説
新事業進出補助金は、中小企業・中堅企業が新たな事業分野へ進出するための設備投資やシステム構築を国が支援する大型補助金です。2024年度まで実施されていた「事業再構築補助金」の後継制度として、2025年度(令和7年度)に新設されました。
事業再構築補助金では「コロナ後の経済環境変化への対応」が主眼でしたが、新事業進出補助金では「ポストコロナを見据えた前向きな事業転換・新分野進出」を積極的に後押しする方針へと進化しています。
制度のポイント
新事業進出補助金は「事業再構築補助金の後継」として創設されましたが、要件や審査基準が大幅に刷新されています。事業再構築補助金の経験がある方も、必ず新制度の公募要領を確認してください。
創設の背景:事業再構築補助金からの進化
事業再構築補助金は2021年度から2024年度まで計12回の公募が行われ、累計約15万件の採択実績を持つ大型補助金でした。しかし、以下の課題が指摘されていました。
- 採択率の低下(第10回以降は30%台に低下)
- 口頭審査の導入で申請者の負担増加
- 補助事業終了後の事業継続率に改善の余地
- コロナ関連要件の形骸化
これらの課題を踏まえ、新事業進出補助金では「コロナ要件」を撤廃し、代わりに「新事業進出要件」「付加価値額年率4%向上」「賃上げ要件」など、中長期的な成長を見据えた要件体系に再編成されました。
他の補助金との位置づけ比較
中小企業が活用できる主要補助金の中で、新事業進出補助金は「新分野への大型投資」に特化した位置づけです。
| 補助金名 | 主な用途 | 補助上限 | 特徴 |
| 新事業進出補助金 | 新分野進出・業態転換 | 9,000万円 | 大型投資、口頭審査あり |
| ものづくり補助金 | 設備投資・生産性向上 | 4,000万円 | 統合予定あり |
| IT導入補助金 | ITツール導入 | 450万円 | ツール選定が容易 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 販路開拓 | 250万円 | 小規模事業者限定 |
注目
2026年度には新事業進出補助金とものづくり補助金の統合が検討されています。最新の公募情報はこちらの記事でご確認ください。
対象者:どんな企業が申請できるのか
新事業進出補助金の対象者は、「中小企業者等」および「中堅企業等」です。個人事業主も含まれますが、一定の条件を満たす必要があります。
中小企業者等の定義
中小企業者等とは、中小企業基本法に定める中小企業者に加え、以下の法人・個人を含みます。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
資本金または従業員数のいずれか一方を満たせば中小企業に該当します。NPO法人や社会福祉法人なども、一部対象となるケースがあります。
中堅企業等の定義
中堅企業等とは、中小企業の範囲を超えるが、資本金10億円未満の企業を指します。中堅企業は補助率が1/3に下がりますが、補助上限額は中小企業と同額(最大9,000万円)で申請可能です。
注意
大企業(資本金10億円以上)は対象外です。また、「みなし大企業」(大企業の子会社等)も原則として対象外となります。出資比率や役員構成が審査されるため、親会社との関係を事前に確認しておきましょう。
個人事業主の申請条件
個人事業主も申請可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
- 確定申告(青色申告)を直近2期以上行っていること
- 事業の実態があること(副業レベルでは不可)
- GビズIDプライムを取得済みであること
- 申請時点で開業届を提出済みであること
なお、個人事業主の場合も補助率・補助上限額は中小企業と同じ扱いになります。ただし、従業員がいない場合は「賃上げ要件」の適用が異なる点にご注意ください。
補助率と補助上限額:最大9,000万円の支援内容
新事業進出補助金の補助率と補助上限額は、企業規模(中小企業か中堅企業か)と従業員数によって異なります。
| 区分 | 補助率 | 補助上限額 | 補助下限額 |
| 中小企業(従業員20人以下) | 1/2 | 1,500万円 | 750万円 |
| 中小企業(従業員21〜50人) | 1/2 | 3,000万円 | 750万円 |
| 中小企業(従業員51〜100人) | 1/2 | 5,000万円 | 750万円 |
| 中小企業(従業員101人以上) | 1/2 | 7,000万円 | 750万円 |
| 中堅企業 | 1/3 | 7,000万円〜9,000万円 | 750万円 |
自己負担の目安
中小企業(補助率1/2)の場合、総事業費3,000万円のプロジェクトなら自己負担は1,500万円です。中堅企業(補助率1/3)の場合は同じ総事業費で自己負担が2,000万円となります。資金計画は余裕を持って立てましょう。
さらに、大幅賃上げ特例を活用すれば、補助上限額に最大2,000万円を上乗せすることが可能です。詳しくは該当記事をご覧ください。
5つの申請要件:すべてクリアが必須
新事業進出補助金に申請するには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けると申請が受理されません。
重要
5つの要件は「申請時の計画」で満たすだけでなく、補助事業終了後の報告期間(3〜5年間)にわたって達成状況がモニタリングされます。未達成の場合は補助金返還を求められる可能性があります。
- 新事業進出要件:新たな製品・サービスを生み出す取組み、または既存事業の提供方法を大幅に変更する取組みであること
- 付加価値額要件:補助事業終了後3〜5年で付加価値額を年率平均4%以上向上させる計画であること
- 賃上げ要件:事業計画期間内に給与支給総額を年率平均2%以上向上させること
- 最低賃金要件:事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上とすること
- ワークライフバランス要件:各種ワークライフバランス関連の取組みを行うこと
各要件の詳細な判定基準や実務上のポイントは5つの申請要件 完全解説をご覧ください。
対象経費の概要:9区分の基本を理解する
新事業進出補助金で認められる対象経費は、大きく9つの区分に分類されます。新分野進出に直接必要な経費が対象であり、汎用的な経費や間接費は対象外です。
| 区分 | 経費の例 |
| 建物費 | 新事業用の施設建設・改修費用 |
| 機械装置・システム構築費 | 製造設備、ITシステム開発費 |
| 技術導入費 | 特許権・実用新案権の取得費 |
| 専門家経費 | コンサルタント・弁理士等の報酬 |
| 運搬費 | 機材の運搬・搬入費 |
| クラウドサービス利用費 | SaaS・クラウド利用料 |
| 外注費 | 加工・設計の外注費 |
| 知的財産権等関連経費 | 特許出願等にかかる経費 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 新製品のプロモーション費 |
各経費区分の詳細ルールと対象外経費の落とし穴については、対象経費9区分 完全ガイドをご確認ください。
申請スケジュールと審査の流れ
新事業進出補助金の申請から交付決定までは、おおむね3〜5ヶ月を要します。計画的な準備が採択への鍵となります。
申請から採択までのタイムライン
| ステップ | 所要期間 | 内容 |
| 1. GビズIDプライム取得 | 2〜3週間 | 電子申請に必須のアカウント取得 |
| 2. 事業計画書作成 | 1〜2ヶ月 | 認定支援機関と連携して作成 |
| 3. 電子申請 | 1日 | jGrants(Jグランツ)で提出 |
| 4. 書面審査 | 1〜2ヶ月 | 外部審査員が事業計画を評価 |
| 5. 口頭審査 | 1日(15分程度) | オンラインで事業計画を説明 |
| 6. 採択発表 | 書面審査後約1ヶ月 | Webサイトで公表 |
| 7. 交付申請・決定 | 2〜4週間 | 採択後に正式な交付申請 |
GビズIDプライムの事前準備
電子申請にはGビズIDプライムが必須です。アカウント発行には2〜3週間かかるため、申請を検討し始めた段階で早めに取得しておきましょう。
準備のコツ
GビズIDプライムの取得方法と準備スケジュールの詳細はこちらの記事で解説しています。公募開始の1ヶ月前には取得を完了させることをおすすめします。
審査のポイント:採択率を上げるために
新事業進出補助金の審査は「書面審査」と「口頭審査」の2段階で行われます。採択率は公募回によって異なりますが、概ね30〜50%程度と言われています。
主な審査基準
書面審査では以下の観点から事業計画が評価されます。
- 事業化点:事業の実現可能性、収益性、市場性
- 再構築点:新事業進出の必要性、事業転換の合理性
- 政策点:国の政策との整合性、地域経済への貢献
- 加点項目:賃上げ加点、デジタル技術活用加点など
特に「事業の実現可能性」と「市場分析の具体性」が重要視されます。数値目標を根拠とともに明示することが採択への近道です。
加点項目の活用
新事業進出補助金には9つの加点項目が設定されています。加点項目をできるだけ多く満たすことで、採択率を大幅に向上させることが可能です。
採択のコツ
加点項目の詳細と具体的な対策は加点項目9つの完全ガイドをご覧ください。事前に取得可能な加点(経営革新計画の承認など)は早めに着手しましょう。
採択後の流れと注意事項
新事業進出補助金は「採択されて終わり」ではありません。採択後には交付申請、補助事業の実施、実績報告、確定検査という複数のステップが待っています。
- 交付申請:採択後2週間以内に交付申請書を提出
- 補助事業実施:交付決定後、原則12ヶ月以内に事業を完了
- 実績報告:事業完了後30日以内または補助事業期間終了日のいずれか早い日までに報告
- 確定検査:証拠書類の確認、現地調査が行われる場合あり
- 補助金入金:確定検査完了後に精算払い(概算払いの制度もあり)
採択後の詳細な手続きフローについては採択後の流れ完全ガイドをご参照ください。
重要な注意事項
補助事業期間中は、経費の支払いをすべて証拠書類で管理する必要があります。見積書・発注書・納品書・請求書・振込明細のセットが揃わない経費は補助対象外となるため、日頃からの書類管理を徹底してください。