目次

クリニック・医療法人の新事業進出補助金2026|オンライン診療・健康食品・医療DXへの転換採択事例

この記事の結論

クリニック・診療所は「中小企業新事業進出補助金」の申請対象となります(補助率1/2・補助上限額は従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円・大幅賃上げ特例適用時は3,000万〜9,000万円)。ただし、保険診療の継続投資は「既存事業」として採択されにくく、オンライン診療・自由診療の新設・健康食品EC・予防医療プログラム・在宅医療サービスなど「これまでと異なる事業分野への進出」であることが採択要件です。医療法人の申請可否は法人形態ごとに公募要領で確認が必要です。第4回公募(2026年5月19日〜6月19日・Jグランツ電子申請)の受付は終了していますが、次回公募(第5回)が設定される見込みがあるため、今から申請書の準備を始めることが採択率を高める最大のポイントです。本記事の補助金情報は変更される場合があるため、最新の公募要領(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp)を必ず確認してください。

専門家1 専門家2 専門家3

新事業の補助金申請、プロに任せませんか?

採択実績豊富な中小企業診断士・行政書士が無料で診断します

無料相談

クリニック・医療業界が「新事業進出補助金」を活用すべき背景【2026年版】

日本のクリニック・診療所経営は、構造的な変化の只中にあります。少子高齢化による患者構成の変化、診療報酬改定による収益圧迫、医療従事者の人手不足、そして医療DX推進への対応——これらの課題が重なる中で、「保険診療一本」の経営モデルだけでは長期的な安定が難しくなってきています。

こうした経営環境の変化を受け、多くのクリニック・医療法人が注目しているのが中小企業新事業進出補助金(旧:事業再構築補助金の後継制度)です。保険診療で積み上げてきた患者との信頼関係・医療知識・医療設備を活かしながら、オンライン診療・自由診療の新設・健康食品EC・予防医療プログラム・在宅医療サービス・医療DXといった「施術に依存しない新たな収益の柱」を構築する際の初期投資を、国が費用面で後押しする制度として活用が拡大しています。

項目内容
制度名中小企業新事業進出補助金(旧:事業再構築補助金の後継)
運営機関中小企業基盤整備機構(SMRJ)
補助率原則1/2(地域別最低賃金引上げ特例適用時は2/3)
補助下限額750万円
補助上限額従業員規模に応じて2,500万〜7,000万円(大幅賃上げ特例適用で3,000万〜9,000万円)
第4回公募受付2026年5月19日〜2026年6月19日(終了)
申請方法Jグランツ(jGrants)による電子申請のみ
公式サイトshinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp

出典:中小企業庁「新事業進出補助金の第4回公募要領を公開しました」(2026年3月)・中小企業基盤整備機構公式サイト(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp)

補助金情報は変更されることがあります

本記事の補助率・上限額・公募スケジュールは、公開時点(2026年6月)の情報を基に記載しています。補助金の条件は公募ごとに改定されることがあります。申請前に必ず公式サイト(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp)の最新の公募要領でご確認ください。

クリニック・診療所が直面する経営課題と新事業進出の必然性

クリニック・診療所の経営課題を整理すると、大きく5つの構造的な壁が存在します。これらの課題への対応として「既存の保険診療以外の収益源」を確立する必要性が、新事業進出の強い動機となっています。

課題具体的な状況経営への影響
診療報酬の抑制・改定リスク2026年度診療報酬改定で一部科目は実質マイナス改定保険診療だけの収益が年々圧迫される
医師・看護師の人手不足地方や特定科での慢性的な人材不足診療キャパシティの頭打ちと採用コスト増
患者数の減少(少子化・流出)地域の患者人口が年々減少保険診療の売上が構造的に下落
医療DX対応コスト電子カルテ義務化・オンライン資格確認導入等IT投資負担が増大する一方
コスト上昇光熱費・医療材料費・人件費の上昇利益率が低下し続ける

これらの課題に対応するためには、医療の専門性・患者との信頼関係・設備を活かした「保険診療以外の収益の柱」を構築することが有効な経営戦略となります。新事業進出補助金は、まさにこうした新たな挑戦を資金面でサポートする制度として設計されています。

クリニック・医療法人の申請資格と「新事業進出」要件の確認

新事業進出補助金の申請にあたっては、事業者要件と新事業進出要件の両方を満たす必要があります。クリニック・医療法人が申請する前に確認すべき主なポイントを整理します。

医療法人の申請可否は法人形態で異なる場合があります

クリニックを個人事業主として運営している場合は、中小企業新事業進出補助金の申請対象に該当することが多い一方、医療法人の場合は法人の性格(社団・財団・特定医療法人等)や事業の課税・非課税区分によって申請可否が変わる場合があります。必ず公募要領の「申請対象者」の定義を確認した上で、認定支援機関(中小企業診断士等)に相談してください。なお、ものづくり補助金では医療法人は対象外とされているため、補助金の種類によって要件が異なる点にも注意が必要です。

申請者の類型対象の可能性注意点
個人事業主のクリニック(個人開業医)基本的に申請可能課税事業者であることが一般的要件
医療法人(社団・財団)要件確認が必要法人の性格・課税区分で申請可否が変わる場合あり
特定医療法人・社会医療法人要件確認が特に必要非営利性が強い法人形態は要件外となる可能性
合同会社・株式会社形態の医療サービス会社申請可能な場合が多い実態確認が必要

「新事業進出要件」については、現在行っている保険診療とは異なる新しい事業分野への進出であることが必要です。具体的には、以下のような要件チェックが求められます。

  • 現在の主たる事業(保険診療)とは異なる市場・顧客層への進出であること
  • 新規性・独自性があり、付加価値額の4%以上の向上が見込めること
  • 賃上げ(従業員給与の3.5%以上の引上げ)を計画していること
  • Gビズ IDプライムアカウントを取得していること
  • 認定支援機関(中小企業診断士等)の確認書を取得していること

クリニック・医療法人が進出しやすい新事業の方向性と補助対象経費

クリニック・医療法人が新事業進出補助金を活用して進出を検討しやすい新事業の方向性と、それぞれの主な補助対象経費を整理します。「保険診療の延長」ではなく、新しい市場・顧客層への進出として設計することが採択要件を満たすための重要なポイントです。

新事業の方向性主な補助対象経費採択ポイント
オンライン診療サービスの新設・拡充システム構築費・ビデオ診療プラットフォーム・通信設備既存の対面診療とは別のサービスとして独立性を示す
自由診療の新規開設(アンチエイジング・美容点滴等)医療機器・内装工事・ECサイト・広告宣伝費保険診療とは異なる顧客層と収益モデルを明確化
健康食品・サプリメントEC参入OEM委託費・ECサイト構築・広告費・物流システム医師監修の専門性を差別化軸に設定する
予防医療・ウェルネスプログラム検査機器・プログラム開発費・デジタルヘルスツール患者ではなく「健康な人」を対象とした市場への進出
在宅医療・訪問診療の新規開始訪問診療用車両・設備・スタッフ研修費・管理システム新規の診療圏・サービス形態への進出として設計
医療データ活用・AIヘルスケアサービスシステム開発費・AI分析ツール・データ基盤構築診療データを活用した新たなサービスとして独立させる
医療スタッフ向け研修・教育事業LMS構築費・教材制作費・動画制作・外注費クリニックが持つ医療知識を「教育商品」として新市場に

補助対象となる経費の主要9区分(新事業進出補助金)

  • 機械装置・システム構築費:新事業用医療機器・AIシステム・ECシステム・診療予約管理ツール等
  • 建物費:新事業用途の内装工事(既存診療室の改修ではなく新規スペースの整備等)
  • 外注費:OEM製造委託・システム開発外注・コンテンツ制作(補助金額の10%上限)
  • 技術導入費:特許権・実用新案権の取得費用等
  • 専門家経費:薬事コンサル・中小企業診断士報酬等(100万円上限)
  • 広告宣伝・販売促進費:新事業向けWebサイト制作・SNS広告・チラシ等
  • 研修費:新事業に必要な技術・知識の習得コスト
  • クラウドサービス利用費:新事業用SaaS・CRMツール・クラウド診療システム等
  • 知的財産権等関連経費:商標登録費等

※補助対象外の経費(既存保険診療設備の単純更新・汎用PC単体・修繕費等)は最新公募要領でご確認ください。

オンライン診療サービスの新設・拡充|費用内訳と補助金の活用法

オンライン診療は2022年の規制緩和で初診からの利用が正式に解禁されて以来、患者の利便性向上と地理的制約の撤廃から需要が拡大しています。対面診療と並行して「オンライン診療専門サービス」を独立した事業として立ち上げることは、新事業進出要件を満たしやすいモデルの一つです。

オンライン診療サービス新設 初期投資モデルケース(クリニック・従業員5〜15名)

オンライン診療プラットフォーム導入・構築

200〜600万円

院内通信インフラ整備(高速回線・カメラ設備)

50〜150万円

予約・決済・問診統合システム

100〜300万円

Webサイト・LP整備・SEO対策

100〜250万円

広告宣伝費(初期集客)

200〜500万円

初期投資総額(モデル)

800〜2,000万円

補助金で賄える額(補助率1/2の場合)

400〜1,000万円

※上記はモデルケースです。実際の費用は診療科目・規模・システム選定によって異なります。複数ベンダーから見積もりを取得することを推奨します。

オンライン診療を「新事業」として設計するポイント

オンライン診療の立上げが「既存診療の継続」ではなく「新事業進出」として評価されるには、①対象患者層が新規であること(例:遠隔地・他都道府県の患者)、②診療科目が自由診療領域や新規診療科であること、③新たなデジタルヘルスサービス(データ蓄積・AIフォロー)との組み合わせ、のいずれかを事業計画書で明確に示すことが有効です。

自由診療の新規開設(アンチエイジング・美容点滴・疲労回復)

保険診療クリニックが「アンチエイジング外来」「美容点滴・栄養点滴」「フェムケア(女性ホルモン管理)外来」「男性更年期外来」「がん検診・人間ドック」などの自由診療を新設することは、新事業進出補助金の採択事例の中でも頻繁に見られるパターンです。これらは既存の保険診療とは顧客層・価格帯・収益モデルが根本的に異なるため、「新事業進出」として評価されやすい特徴があります。

自由診療の種類想定月次売上初期投資の目安補助金活用ポイント
アンチエイジング・美容点滴外来100〜500万円500〜1,500万円点滴ルーム整備・機器・予約システム
フェムケア・女性ホルモン外来150〜600万円300〜1,000万円専用診察室・検査機器・アプリ
人間ドック・予防検診パッケージ300〜1,000万円1,000〜3,000万円検査機器一式・予約管理システム
がんゲノム・遺伝子検査外来200〜800万円800〜2,000万円検査機器・データ管理システム
男性更年期・ED外来100〜400万円200〜800万円専用診察室・処方管理システム

※上記はモデルケースです。実際の売上・費用は立地・患者数・診療体制によって大きく異なります。

健康食品・サプリメントEC参入|医師監修の専門性を差別化軸に

医師・クリニックが「健康食品EC」や「サプリメント販売」に新規参入するケースは、旧事業再構築補助金の採択事例においても複数見られました。クリニックが保有する医師監修の信頼性・患者データに基づくエビデンス・ブランド力を活かした健康食品事業は、一般の健康食品ベンダーとの差別化が図りやすい新事業領域です。

健康食品EC新規参入 初期投資モデルケース(クリニック・医師監修ブランド)

OEM製造委託・処方開発

500〜1,500万円

パッケージ・ブランドデザイン

150〜400万円

ECサイト構築・サブスク機能

300〜600万円

広告宣伝・デジタルマーケティング

400〜1,000万円

薬事コンサル・機能性表示食品届出費

100〜300万円

初期投資総額(モデル)

1,500〜3,800万円

※上記はモデルケースです。実際の費用は商品数・製造規模・ターゲット市場によって大きく異なります。

機能性表示食品・医薬品との境界に注意

健康食品ECに参入する場合、薬機法(医薬品医療機器等法)・景品表示法・食品衛生法への適合が必要です。「〇〇に効く」等の医薬品的な効能を謳うことは原則禁止されており、機能性表示食品として販売する場合は消費者庁への届出が必要です。専門家経費として薬事コンサルタントへの相談費用を補助金に計上することが可能です(100万円上限)。事業計画書に規制対応の計画を明記することが採択評価の加点につながります。

予防医療・ウェルネスプログラムの新設

「治療」から「予防」へという医療の패旋を受け、予防医療・ウェルネス分野は急速に市場が拡大しています。厚生労働省の推計によると、日本の予防・健康づくりに関連する産業規模は10兆円超とされており(出典:経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会」参考資料)、クリニックがこの市場に参入するための差別化ポイントは「医療の専門性に裏打ちされた予防プログラム」の提供です。

予防医療・ウェルネスの形態特徴補助対象の主な経費
生活習慣病リスク評価+AI管理プログラム遺伝子・血液検査とAI分析を組み合わせた継続型AI分析システム・検査機器・アプリ開発
企業向け産業医・健康経営支援サービス法人契約で安定収益。月額サブスク型が主流管理システム・オンライン相談ツール・研修費
フィットネス×医療連携ウェルネスクラブ運動指導+医師モニタリングの複合型運動機器・施設整備・モニタリングシステム
メンタルヘルス・ストレスケアオンラインサービス精神科・心療内科クリニックが参入しやすいカウンセリングシステム・コンテンツ制作費

クリニック・医療法人の新事業進出補助金採択モデルケース集

公開されている旧事業再構築補助金(新事業進出補助金の前身)の医療機関採択実績や類似支援制度における事例を参考に、クリニック・医療法人が新事業進出補助金で採択されやすいモデルケースを示します。

以下の事例はいずれもモデルケースとして作成したものであり、実際の特定の採択案件の内容を保証するものではありません。事業計画書を作成する際の参考としてご活用ください。

モデルケース①:内科クリニックがオンライン診療専門事業を新設(補助額約750万円)

項目内容
業種・規模内科・消化器科クリニック(個人開業医・従業員8名)
既存事業保険診療(内科・消化器科)・地域患者向け対面診療
新事業の内容東京・関東圏外(遠隔地)の患者向けオンライン初診・再診サービスの新設。慢性疾患(高血圧・糖尿病・脂質異常症)の継続管理を完全オンラインで提供
投資内容オンライン診療プラットフォーム導入(300万円)・専用診察室整備(100万円)・予約・決済・問診統合システム(150万円)・広告宣伝費(200万円)
総投資額約1,500万円(モデル)
補助金額(モデル)約750万円(補助率1/2)
採択評価ポイント地理的に異なる新規患者層への進出・完全オンライン診療という新規サービス形態・月次売上500万円超のシミュレーション

モデルケース②:消化器科クリニックが腸内フローラ改善サプリECに参入(補助額約1,200万円)

項目内容
業種・規模消化器科・胃腸科クリニック(医療法人・従業員15名)
既存事業保険診療(消化器科・胃腸科)・内視鏡検査
新事業の内容腸内フローラ検査サービスと連動した医師監修サプリメントのEC販売事業。腸内細菌叢のデータ分析に基づくパーソナライズドサプリメントをD2C販売
投資内容OEM製造委託・処方開発(700万円)・ECサイト構築・サブスク機能(400万円)・腸内フローラ分析システム(400万円)・広告宣伝費(500万円)・薬事コンサル(100万円)
総投資額約2,400万円(モデル)
補助金額(モデル)約1,200万円(補助率1/2)
採択評価ポイント専門的な検査データと連動したサプリメントという独自性・月次売上800万円超のシミュレーション・薬事対応の計画を明示

モデルケース③:整形外科クリニックが法人向け健康経営支援サービスを新設(補助額約1,500万円)

項目内容
業種・規模整形外科クリニック(個人開業医・従業員20名)
既存事業保険診療(整形外科・リハビリ)・地域患者向け対面診療
新事業の内容地域中小企業向け「産業医サービス+健康経営支援パッケージ」の月額サブスクリプション提供。オンライン産業医・腰痛予防プログラム・ストレスチェック代行を一括提供
投資内容健康経営支援管理プラットフォーム構築(800万円)・オンライン面談システム(200万円)・プログラムコンテンツ制作(300万円)・広告宣伝・営業体制整備(700万円)
総投資額約3,000万円(モデル)
補助金額(モデル)約1,500万円(補助率1/2)
採択評価ポイント法人契約による安定収益モデル・整形外科の専門性(腰痛・肩こり対策)を活かした差別化・新規顧客層(中小企業の人事部門)への進出

モデルケース④:内科クリニックが遺伝子検査×AIパーソナル予防医療に参入(補助額約2,500万円)

項目内容
業種・規模内科クリニック(個人開業医・従業員12名)
既存事業保険診療(内科)・生活習慣病管理
新事業の内容遺伝子検査と血液バイオマーカー分析を組み合わせたAIパーソナル予防医療プログラムの提供。自由診療として月額サブスクリプション型で展開
投資内容遺伝子解析システム・機器導入(1,500万円)・AI分析プラットフォーム構築(1,500万円)・顧客向けアプリ開発(500万円)・広告宣伝費(1,000万円)・専門家経費(100万円)
総投資額約5,000万円(モデル)
補助金額(モデル)約2,500万円(補助率1/2)
採択評価ポイント保険診療とは全く異なる自由診療市場への参入・AIと医療データの組み合わせによる高い革新性・月次売上1,000万円超のシミュレーション
専門家1 専門家2 専門家3

新事業の補助金申請、プロに任せませんか?

採択実績豊富な中小企業診断士・行政書士が無料で診断します

無料相談

クリニック・医療法人が新事業進出補助金を申請する手順チェックリスト

新事業進出補助金の申請には、事前準備から採択通知・交付決定まで複数のステップがあります。特にクリニック・医療法人の場合は、申請者要件の確認と「新事業進出要件」の立証に時間がかかることが多いため、公募開始の少なくとも2〜3ヶ月前から準備を始めることを強く推奨します。

ステップ1:申請前の事前準備チェックリスト

確認項目詳細状況
申請者要件の確認個人開業医か医療法人か、法人形態・課税区分を公募要領で確認要確認
Gビズ IDプライムの取得Jグランツ(jGrants)申請に必須。取得まで2〜4週間かかる場合あり要事前取得
認定支援機関の選定・相談開始中小企業診断士・金融機関・行政書士等の認定支援機関に相談。確認書取得に時間がかかる2〜3ヶ月前から
新事業のビジネスモデル設計既存事業との違い・新規顧客層・収益モデル・付加価値額の向上率を定量化申請書の核心部分
賃上げ計画の策定従業員給与を3.5%以上引き上げる計画を策定(採択要件)事業計画書に明記
見積書の取得(2社以上)投資対象の設備・システムについて2社以上から相見積もりを取得必須
薬事・法規制対応の確認健康食品・医療機器を扱う場合は薬機法・景表法・食品衛生法への対応計画を準備該当者のみ

ステップ2:事業計画書の作成ポイント(クリニック・医療業種向け)

新事業進出補助金の審査では、事業計画書の質が採択率を大きく左右します。クリニック・医療法人に特有の、審査で重視されるポイントを整理します。

事業計画書で特に重視される5つのポイント(医療業種)

  • 新事業進出要件の明確化:保険診療とは異なる市場・顧客層・収益モデルであることを具体的なデータと共に示す
  • 市場規模と成長性:参入する新事業の市場規模・成長率を公的データ(経産省・矢野経済研究所等)で裏付ける
  • 競合優位性の根拠:医師監修・医療専門性・患者信頼を差別化軸として具体的に説明する
  • 付加価値額4%向上の計算根拠:売上・利益のシミュレーションを3〜5年分で示す
  • リスクと対応策:薬事リスク・競合参入・規制変更リスクとその対応策を記載する(対策を書く=誠実さの評価)
計画書の構成要素クリニック特有の記載ポイント
現状分析保険診療の売上構成・患者数推移・診療報酬改定の影響を定量的に示す
新事業の概要医療の専門性をどう活かすか・既存患者基盤との連携方法を明記
市場分析参入する自由診療市場・ウェルネス市場の規模を公的統計で根拠付け
競合分析競合する医療機関・民間企業との差別化要因を具体的に列挙
事業計画・収支予測月次・年次の売上・費用・利益シミュレーションを3〜5年で提示
資金計画補助金以外の自己資金・金融機関借入の計画を明示

ステップ3:申請手続きとJグランツ(jGrants)での電子申請

新事業進出補助金の申請はJグランツ(jGrants)による電子申請のみです。紙での申請や郵送申請は受け付けていないため、申請期間内にシステム上での手続きを完了させる必要があります。

手続きの流れ内容・注意点
1. Gビズ IDプライム取得gBizIDサイトから申請。審査に2〜4週間かかるため早期取得必須
2. jGrants(Jグランツ)にログインGビズ IDプライムでログイン。補助金ページから申請書類を作成
3. 必要書類のアップロード事業計画書・認定支援機関確認書・見積書・決算書等をPDFでアップロード
4. 申請書の提出(電子署名)申請受付期間内(第4回は2026年6月19日18:00締切)に電子提出
5. 採択審査・結果通知採択結果は公式サイトに掲載。採択後に交付申請手続きが必要
6. 交付決定・事業開始交付決定前の発注・契約は原則として補助対象外。必ず交付決定後に発注する

交付決定前の発注・契約は補助対象外

補助金の交付決定通知を受け取る前に、補助事業として申請した設備やサービスの発注・契約・納品を行った場合、その費用は補助対象外となります。採択通知を受け取っても交付決定前の発注は認められていないため、スケジュールの確認が重要です。

補助率・補助額・自己負担額の詳細内訳(クリニック・医療法人向け)

新事業進出補助金の補助額は、従業員規模と賃上げ特例の適用有無によって変わります。クリニック・医療法人が申請する際に想定される補助額のシミュレーションを示します。

従業員規模通常補助上限大幅賃上げ特例適用時補助率
5名以下(個人開業医・小規模)2,500万円3,000万円1/2(特例時2/3)
6〜20名3,500万円4,000万円1/2(特例時2/3)
21〜50名5,000万円6,000万円1/2(特例時2/3)
51〜100名6,000万円7,000万円1/2(特例時2/3)
101名以上7,000万円9,000万円(別途要件)1/2(特例時2/3)

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金 第4回公募要領」(2026年3月公開)・最新の公募要領は shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp で確認してください。

クリニック向け補助金活用シミュレーション(モデルケース)

従業員規模

10名(内科クリニック)

新事業への投資総額

2,000万円

補助率

1/2

補助金額

1,000万円

自己負担額

1,000万円

賃上げ特例適用時の補助率

2/3(自己負担約660万円)

※上記はモデルケースです。実際の補助金額は投資内容・経費区分・審査により変わります。

補助対象経費と対象外経費の比較(クリニック・医療業種)

経費の種類補助対象補助対象外
医療機器・システム新事業用の機器・AIシステム・オンライン診療プラットフォーム既存保険診療用設備の更新・汎用PC単体
内装・建物工事新事業用スペースの新設・改修工事既存診察室の単純修繕・現状回復工事
ECサイト・Webシステム新事業専用のECサイト・予約システム既存ホームページのリニューアルのみ
広告宣伝費新事業向けの広告・LP・SNS広告費既存診療科への集患広告
外注費OEM製造委託・システム開発委託(補助金額の10%上限)人件費相当の外注・継続的な業務委託
専門家経費薬事コンサル・中小企業診断士報酬(100万円上限)顧問税理士の通常業務料・弁護士の一般法務
クラウドサービス新事業用SaaS・CRM・EHR(新規サービス分)既存業務の継続利用分

「新事業用」の証明が重要

補助対象となるかどうかは「新事業に使用するものか」が判断基準です。既存の保険診療でも使用する汎用性のある機器・システムは補助対象外となる可能性が高いです。導入する機器・システムが新事業にのみ使用されることを事業計画書・見積書で明確に示すことが重要です。

採択率を上げる加点項目と審査のポイント【クリニック・医療法人向け】

新事業進出補助金の採択審査では、必須要件を満たした上で、加点項目によって採択率が大きく変わります。クリニック・医療法人が特に活用しやすい加点項目を整理します。

加点項目内容クリニックへの適用ポイント
賃上げ(大幅)全従業員の給与を前年比3.5%以上引き上げる計画看護師・医療事務員等の賃上げ計画を具体的に記載
DX推進デジタル技術の積極活用が見込まれる事業AIシステム・遠隔診療・データ活用事業は評価が高い
脱炭素・GX省エネ・再エネ活用が事業計画に含まれる診療設備の省エネ化と組み合わせた計画書
経営革新計画都道府県知事認定の経営革新計画を保有事前に都道府県へ申請し認定を受けることで加点
事業継続力強化計画中小企業庁の事業継続力強化計画を保有BCP策定済みであることを証明
地域未来投資促進法地域経済牽引事業計画の承認を受けている地域の雇用・経済への波及効果を計画に明記

採択率を上げる事業計画書の3つの工夫

  • 数値の根拠を具体的に示す:市場規模・顧客単価・想定患者数・回収期間などを公的統計・競合比較・既存患者データで裏付ける
  • 医療専門性を差別化軸に据える:「なぜこのクリニックが新事業を成功させられるか」の説得力ある根拠(資格・専門知識・既存患者基盤)を具体的に記述する
  • 認定支援機関と密に連携する:中小企業診断士等の認定支援機関と事業計画書を共同作成し、確認書の取得と同時に計画の論理矛盾を排除する

クリニックが活用できる補助金一覧と新事業進出補助金との比較

クリニック・医療法人が活用できる主な補助金・支援制度を横並びで比較します。新事業進出補助金は高額な初期投資に向いており、IT・デジタル化補助金はシステム導入に特化しています。事業の内容と投資規模に応じて最適な制度を選択することが重要です。

補助金名補助率上限額対象経費クリニック向け活用例
新事業進出補助金1/2〜2/3最大7,000万円(特例9,000万円)設備・システム・建物・広告等新規自由診療・オンライン診療・健康食品EC
デジタル化・AI導入補助金(IT導入補助金後継)1/2〜2/3450万円ITツール・クラウドサービス電子カルテ・レセコン・AI問診システム
ものづくり補助金1/2〜2/31,000〜3,000万円機械設備・システム個人開業医のみ対象(医療法人は対象外)
医療施設等経営強化緊急支援事業(厚労省)定額補助病院・診療所規模による経営強化設備診療所の経営強化投資
東京都医療DX人材育成支援事業都道府県独自補助都道府県によるDX人材育成研修費医療DX推進のための人材研修

補助金の併用・重複申請について

新事業進出補助金と他の補助金の同一事業への重複申請は原則として認められていません。ただし、別の事業・別の経費であれば併用が可能な場合があります。例えば「電子カルテ導入にIT導入補助金」+「新規オンライン診療事業に新事業進出補助金」という形での並行活用は検討の余地があります。詳細は公募要領と認定支援機関にご確認ください。

クリニック・医療法人の申請でよくある失敗パターンと回避策

新事業進出補助金においてクリニック・医療法人が陥りやすい落とし穴と、その回避策を整理します。事前にこれらの注意点を把握しておくことで、申請の質を高めることができます。

失敗パターン具体的な状況回避策
「保険診療の延長」と判断される既存診療の設備更新・患者数増加のための投資を新事業として申請新規市場・新顧客層への進出であることを明確に区別して計画書を作成
医療法人の申請可否を確認しない医療法人形態のまま申請して対象外と判明公募開始前に公募要領と認定支援機関で申請者要件を確認
Gビズ IDの取得が遅れる申請締切直前にGビズID申請で締切に間に合わない公募開始の2ヶ月前には申請開始
交付決定前に発注・契約する採択通知後に補助対象設備を発注して補助対象外となる交付決定通知を必ず受け取ってから発注
薬事規制への対応が不十分健康食品・医療機器事業の計画で薬機法対応が不明確薬事コンサルタントを専門家経費で活用し計画書に対応策を明記
見積書が1社しかない相見積もりなしで申請して審査で指摘される主要な投資項目について必ず2社以上から見積書を取得

よくある質問(FAQ)

Aはい、個人事業主として運営している個人開業医は中小企業新事業進出補助金の申請対象となることが多いです。ただし、課税事業者であることや、中小企業基本法上の定義を満たすことなどの要件があります。詳細は公募要領(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp)でご確認ください。
A医療法人の場合は法人の性格(社団・財団・特定医療法人等)や事業の課税・非課税区分によって申請可否が変わる場合があります。公募要領の「申請対象者」の定義を確認した上で、認定支援機関(中小企業診断士等)に相談することを推奨します。なお、ものづくり補助金のように医療法人が明示的に対象外とされている補助金もあるため、補助金の種類ごとに確認が必要です。
Aオンライン診療サービスの新設は、既存の対面保険診療とは異なる新しいサービス形態・顧客層への進出として設計することで、新事業進出補助金の対象となる可能性があります。特に、遠隔地の新規患者向けや自由診療領域の新設、新規診療科の立上げと組み合わせた場合は「新事業進出」として評価されやすくなります。詳細は公募要領と認定支援機関でご確認ください。
A補助金額は従業員規模と投資総額によって変わります。例えば従業員10名のクリニックが健康食品EC参入のために2,000万円を投資する場合、補助率1/2が適用されれば補助金額は1,000万円となります。賃上げ特例が適用されれば2/3の約1,300万円になります。ただし、補助額は750万円が下限です。実際の金額は公募要領・認定支援機関でご確認ください。
A第4回公募の受付期間は2026年5月19日〜2026年6月19日でした(受付終了)。第5回以降の公募については、中小企業基盤整備機構の公式サイト(shinjigyou-shinshutsu.smrj.go.jp/schedule)でスケジュールが公開される見込みです。次回公募に備えて事業計画書の準備を進めておくことを推奨します。
Aいいえ、認定支援機関(中小企業診断士・金融機関・認定税理士・弁護士等)による事業計画書の確認書の提出が申請の必須要件です。認定支援機関の選定と相談には時間がかかるため、公募開始の2〜3ヶ月前には相談を開始することを強く推奨します。
AGビズ IDプライムはGビズ IDの公式サイト(gbiz-id.go.jp)からオンラインで申請できます。印鑑証明書等の書類と合わせてデジタル申請する方式で、審査に通常2〜4週間程度かかります。申請締切ギリギリに取得しようとすると間に合わない可能性があるため、公募開始の2ヶ月以上前に取得手続きを始めることを推奨します。
A採択通知を受け取った後、交付申請・審査を経て「交付決定通知」が届いてから初めて補助対象の設備発注・工事着工・契約が可能となります。採択通知の段階での発注は補助対象外となります。交付決定までには採択発表後も数週間〜1ヶ月程度かかることがあるため、スケジュールに余裕を持った計画が必要です。
A自由診療の新設が「新事業進出」として評価されるには、①既存の保険診療とは異なる患者層・収益モデルであること、②アンチエイジング・美容・ウェルネス・遺伝子検査など保険外診療の新市場への参入であること、③新規の設備・スペース整備が必要なこと、の3点を事業計画書で明確に示すことが有効です。認定支援機関と共に計画書を精緻化することを推奨します。
A予防医療プログラムを新事業として立ち上げる際は、①保険診療の延長にならないよう「健康な人」を対象とした事業として設計すること、②医療的効果を謳う表現は薬機法・景表法に反する可能性があるため薬事コンサルに確認すること、③月次・年次の収支シミュレーションに実現可能な数値を用いること、の3点に特に注意が必要です。
専門家1 専門家2 専門家3 専門家4

無料で専門家に相談できます

社労士・行政書士・診断士・税理士・補助金コンサルタント・IT導入支援事業者が貴社に合った補助金を診断し、申請をサポートします。

相談・診断は完全無料 申請実績豊富な専門家が対応 最短翌日に折り返し連絡
最新の問い合わせ・相談 もっと見る(過去の相談)→
新事業進出補助金のことなら
専門家チーム 専門家 専門家 新事業進出をお考えの方 専門家に無料相談する 専門家 専門家 地域・業種から選べる お近くの専門家を探す